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仮想通貨でHDD“買い占め”横行…背景にビットコインによる膨大な電力消費

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

 暗号資産(仮想通貨)を獲得する「マイニング(採掘)」需要が急増し、マイニングに必要なパソコン部品が品薄となる状態が続いている。数年前からグラフィックボード(グラボ)と呼ばれるパーツの価格が高騰し、買い占めや転売が横行しているが、最近は大容量の内蔵ハードディスクドライブ(HDD)やSSDも入手が困難な状態になりつつあるという。これまでマイニングに膨大な電力が必要だった暗号資産が米大企業トップの発言で急落する一方、「環境にやさしい」とされる暗号資産が注目され、HDDやSSDの需要が一気に高まったようだ。

1.5万円のHDDを10万円で“転売”

 暗号資産は国や中央銀行のような公的な発行主体や管理者は存在しない。このため、「ブロックチェーン(分散台帳)」という技術を使い、ユーザーが相互に監視することで偽造などを予防している。取引の記録が正しいか確かめる作業をユーザーが手伝い、その対価として報酬を得る仕組みがマイニングだ。金の採掘にちなんでこう名づけられた。

 報酬を得ようとする人が世界で相次ぎ、マイニングに必要なグラボやHDDといったパソコン部品が品薄状態となっているのだ。

 「ゴールドラッシュで利益を得たのは金を掘る人ではなく、彼らにツルハシやシャベルやジーンズを売った人だ」

 著名投資家、ピーター・リンチ氏の言葉を借りるなら、グラボやHDDは「ツルハシとシャベル」に該当する。

 グラボは高度な映像処理を行うために必要な部品で、高精細の3Dグラフィックやゲームのために用いられる。品薄状態は、代表的な暗号資産であるビットコインの価値が急騰した2017年ごろから続いていた。グラボに搭載されているGPUという半導体チップの演算能力を応用し、AI(人工知能)を支える「機械学習」などに役立てようという技術が発展しており、「マイナー」と呼ばれる暗号資産の“採掘者”に目をつけられたのだ。

 ビットコインなどの暗号資産では、いち早く正しい計算をした人に、報酬としてその暗号資産が与えられる「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」という仕組みが採用されている。そのため、高性能のGPUが「ツルハシ」として買い占められてしまった。グラボを製造、販売する業者にとっては、まさにゴールドラッシュのような特需だが、従来の顧客層であるパソコン愛好家やゲームユーザーにとっては不満は募るばかりだ。

 こうした状況を受け、半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)は2月、あえてゲーム用GPUのマイニング性能だけを半分に引き下げると発表。代わりに、映像を出力する機能を持たない暗号資産専用のGPU「NVIDIA CMP」シリーズを展開すると明らかにした。製品を分けることで品薄改善を狙った形だが、NVIDIA CMPは暗号資産「イーサリアム」のみに対応しており、効果は未知数とされる。

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