ビッグデータで“食のトレンド”をキャッチ
いつどこで何を食べ、どのくらいおいしかったか-。料理への評価を投稿するユーザーにとって、「SARAHは備忘録のようなもの」(高橋さん)だという。フェイスブックやインスタグラムに自分の食べた料理の写真を投稿するような感覚に近いかもしれない。1つでも多くの「いいね!」を得たい、他者から認められたいという「承認欲求」がSNS投稿の一つの原動力になっているとすれば、SARAHは「自己満足的な成長欲求」(同)が投稿の動機付けになっているという。
「食べたものすべてをSNSに投稿するのは、(見る人によっては)嫌味になることもあります。そこで、SARAHでは一定の数ごとに『カレーライスを10皿食べました』といった画像が自動生成され、その画像をSNSに投稿できます」と高橋さん。SARAHに食べた料理の評価や感想を投稿すると、ジャンルごとに分類され、自分独自のランキングも作成できる。評価やレビューをたくさん投稿している古参のヘビーユーザーだけでなく、新規ユーザーの投稿も注目されるように工夫しているほか、「うどんだったらこの人、ギョウザならこの人」とユーザーが脚光を浴びる「仕掛け」(同)も施しているという。
投稿された膨大な口コミからメニューごとに至極の一品を表彰する「ジャパン・メニュー・アワード」が選ばれるが、「一皿」ごとに評価できるSARAHだけに部門が細かく分かれており、アプリ開発のきっかけとなったポテサラはもちろん、クリームパンやかき氷までジャンルは多岐にわたる。
「今、どこでどんなメニューが人気なのか。SARAHに投稿されたデータを分析し、可視化できれば、食のトレンドが見えてきます」
高橋さんはグルメサイトの一歩先を見据える。それは、投稿された膨大なビッグデータの活用だ。「FoodDataBank」というサービスでは、投稿データからトレンドを見つけ出し、どういった年齢層に人気なのかターゲット情報を分析できるという。すでにコンビニ大手や、食品メーカー、外食チェーンなどが活用しており、例えば、プリンを開発する場合なら、「食感」というキーワードで絞り込めば、硬めでなめらかな食感のプリンのニーズが高いことが分かるという。
集計が必要なアンケートとは異なり、企業が瞬時にトレンドをつかむことができるのも利点だ。飲食店のメニューをスマホで見られる「SmartMenu」では、データを活用して来店者ごとにレコメンドを表示させることもできる。
今後は料理レシピのデータを取り込み、うまみや苦み、酸味など細かいデータも蓄積することも考えているという。通信技術を活用した「フードテック」は、政府が成長分野と位置付ける食の先端技術だ。高橋さんはこう力を込める。
「フードテック先進国のアメリカや中国に比べると、日本の取り組みは出遅れていますが、『食×テクノロジー』の分野は日本企業が世界に価値を提供できるものだと思っています」
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