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話題の「電動キックボード」を記者が体験! 日本の交通環境への適応がカギ

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

 次世代の移動手段として注目される電動キックボードのシェアリングサービスの実証実験が東京都内で始まった。電動キックボードの開発やサービス運営を手掛けるベンチャー企業のLuup(ループ、東京都渋谷区)は「電車を利用するほどの距離ではないけれど、歩くとちょっと遠い距離の新たな移動手段に」と意気込む。普及が進めば、公共交通機関利用による「密」も避けられそうだ。都会の街並みを颯爽(さっそう)と駆け抜けるこの新たなモビリティは、日本の交通環境と社会的ニーズにフィットするのか。自転車・バイクメディアの専門記者経験の長いSankeiBiz編集部員が渋谷の街で電動キックボードを体験した。

 「小型特殊自動車」としてヘルメット着用を任意に

 実物を目の当たりにすると、イメージしていたより一回りも大きい印象だった。重量は25キロ。バッテリーを内蔵するボード部分に両足を乗せてみた。タイヤの大きさは10インチで、思った以上に安定感がある。サイドミラーやウィンカー、ナンバープレートは、原付バイクのそれだった。

 利用方法は“スマート”だが、ハードルもある。まずスマートフォンの専用アプリをダウンロードし、運転免許証を登録。走行ルールの確認テストに満点で合格しなければならない。テストは基本的な交通法規の知識を確認するもの。免許を保有する人にとってはそれほど難しくはない問題とはいえ、ある程度は準備をしておいた方が良いかもしれない。

 電動キックボードは道路交通法で原付バイク(原動機付自転車)に分類され、個人で所有する場合は原付免許で乗ることができるが、今回の実証実験の対象となる電動キックボードは「小型特殊自動車」として扱われるため、小型特殊以上(普通、自動二輪など)の免許が必要になるので注意が必要だ。

 手続きを済ませ、いよいよ東京・渋谷の街で電動キックボードを駆(か)ってみた。電動だが、両足を乗せた状態でいきなり動き出すことはない。通常のキックボード同様、助走をつけてからスイッチを押さないとアクセルが作動しないように制御されているのだ。最初こそ少し戸惑いを覚えたが、アクセル、ブレーキともにすぐに要領をつかむことができた。スピード調整を体得できれば、ただただ楽しい乗り物。これはもう、移動手段というより、公道を走れるアクティビティ。自ずとテンションも上がる。

 車道の路肩にあるわずかな段差も危険を感じるようなことはなかった。太いタイヤに加え、前輪部分に搭載されたサスペンションが衝撃を吸収するからだろう。登坂性能も十分だ。急傾斜の上り坂はさすがに少し減速するものの、ストレスを感じることなく上り切った。ウィンカーの操作はハンドルの左手部分にある。ウィンカーは自転車には付いていないので、直感的に操作することが難しく、右折、左折をする際にしばしば操作に気をとられた。

 原付バイクと同じ扱いの電動キックボードの法定最高速度は時速30キロとなっているが、シェアリングサービスで借りたボードは時速15キロに抑えられていた。小型で電動走行する新たなモビリティー(乗り物)に関する警察庁の有識者検討会は4月、電動キックボードなどについて、自転車程度の15キロ以下は運転免許不要で路側帯や車道を、15キロ超は免許が必要で車道を走るよう区分した。今回のシェアリングサービスでは、普及拡大の障害とも指摘される「ヘルメット着用義務」を取り除くため、特例措置で小型特殊自動車として扱い、最高時速を15キロに抑えているのだ。

 時速15キロといえば遅い印象があるが、一般的な自転車の平均速度とされる。体感速度としては決して遅くなく、渋谷のように人の往来が多い細い道であればむしろコントロールしやすい現実的な速度ともいえる。サドルにまたがり、全身でコントロールする自転車に対し、立った姿勢のままのキックボードは上半身だけで制御することになる。コントロール性能はその点でやや自転車に劣る印象を受けたが、これもきっと慣れの問題なのだろう。

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