変わる市場で見つけた可能性
運動中のごみを減らすため、カステラには付き物の「底の紙」がないのも特徴だ。また、片手で食べやすいように、従来のエナジーバーと同じくらいのサイズにした。消費者のニーズを細大漏らさずすくい取って新商品に反映させたという。
だが、職人の反発も強かったのは前述した通り。「開発担当者が職人を説得し、最初の試作をなんとか完成させました。カステラをプレスした形にした際の職人の厳しい反応は、今では良い思い出になっております」(広報担当者)。歴史と伝統のある企業だけに、大胆なイノベーションにはひとかたならぬ苦労もあるようだ。
V!カステラの開発した理由はまだあるという。それは「ギフト需要の低下や自家需要の増加など市場が大きく変わっている」(同社)からだった。市場を模索する過程の産物だったのだ。
経済産業省の家計調査によると、近年、カステラの1世帯当たりの年間支出額は平均700~800円程度。ケーキの同5500円やチョコレートの同4000~5000円との差は大きい。都道府県別では、カステラの本場、長崎県が全国平均の約8倍と突出しているものの、全国的にはカステラの支出額はケーキなどに大きく水をあけられている。だがその分、まだ伸びしろがあるともいえる。
V!カステラは1本あたり150キロカロリーで、たんぱく質3.2グラム、脂質2.5グラム、炭水化物28.4グラム、食塩相当量0.1グラム。価格は10本で税込み2000円だ。広報担当者は「カステラに補食としての可能性を見出したことで、スポーツシーンという市場を見つけることができたと考えています」と新しい需要の開拓に期待を寄せている。
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