現場の風

本田技術研究所 自動運転「レベル3」は必ず普及

 □本田技術研究所 エグゼクティブチーフエンジニア・杉本洋一さん(60)

 --ホンダの新型「レジェンド」は、渋滞時の高速道路でシステムが走行を担う「レベル3」の自動運転技術を世界で初めて搭載した市販車だ

 「ホンダは、自動運転技術は遅れていると言われていたが、安全に対して真摯(しんし)に、愚直に取り組む文化がある。レベル3を実現しようというプロジェクトでも、安全性、信頼性の設計から始めた。基本設計を大きく変更することなく、ここまできた」

 --レベル3機能の作動時は、ドライバーは前方から視線をそらし、ナビ画面でテレビやDVDを視聴できる

 「自動運転技術はヒューマンエラーを排除でき、交通事故を大きく削減できる可能性がある。運転が苦手な人や高齢者も、安心して遠くまで出かけられ、自由な移動を提供できる。レベル3は、ドライバーとシステムが仕事を分担する点に特徴がある」

 --100台の限定生産で、価格は1100万円。普及に向けた価格低減などの見通しは

 「安全技術を最初投入する段階では台数も少なく、コストは高くなってしまう。2003年に衝突被害軽減ブレーキを実用化したが、当たり前の装備になるのに15年ぐらいかかった。ただ、レベル3は将来必要とされる技術だ。必ず普及し、ステークホルダーも増え、コストは下がると思う」

 --他の車にも技術は応用できるか

 「開発にあたって高速道路で約130万キロ走行し、さまざまなデータを収集した。システムの安全性の設計に始まり、認知、予測、判断のそれぞれのアルゴリズム(計算手法)を高度化させた。安全性について証明するプロセスも構築し、具体的なシミュレーションや実機のデータを使いながら検証する仕組みを作り上げた。こうしたことは今後の運転支援技術にも生かせる」

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【プロフィル】杉本洋一

 すぎもと・よういち 東大工卒。1986年、本田技術研究所入社。予防安全、運転支援、自動運転の技術を手がけ、上席研究員を経て、2020年から現職。

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