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スシロー、くら寿司はコロナ禍でも加速 業界2強が都心に出店攻勢

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い首都圏や関西圏などに政府の緊急事態宣言が発令され、営業時間短縮などで苦境に立たされる外食産業で、回転ずしチェーンの健闘が目立っている。テークアウトでの巣ごもり需要に加え、コロナ禍前から進めていた非接触化、省人化への対応が奏功。業界2強のスシローグローバルホールディングス(GHD)とくら寿司を中心に、閉店した居酒屋跡などに出店を加速させる動きも出ている。(田村慶子)

 スシロー売上高過去最高

 スシローGHDの令和2年9月期連結決算は、売上高が前期比2・9%増の2049億円と過去最高を更新。チェーン店の地力をみるうえでの指標となる既存店売上高は、前回の緊急事態宣言が発令された2年4月に前年同月比でほぼ半減したもののその後回復し、10月は4・3%増とコロナ禍前の水準を上回った。

 くら寿司の2年10月期連結決算は米国事業の不振で2億円の最終赤字(前期は37億円の黒字)だったが、国内売上高は前期比0・5%増の1231億円と過去最高を更新。既存店売上高も10月は前年同月比26・1%増、11月は34・4%増と好調だった。

 日本フードサービス協会(東京)は自粛明けに行きたい外食として「ごちそう感覚を手軽に楽しめる回転ずしの需要が高まっている」と指摘する。料理がレーンで運ばれてくるなどもともと店員らとの接触機会が少なく、近年は省人化のためセルフレジや自動案内機を導入し、非接触化を進めていたことが有利に働いたとみられる。

 また「在宅勤務などテレワークが増えて自宅近くの飲食店へ行く機会が増え、(都心部の飲食店から)回転ずしに人が流れた面もある」ことも後押しした。

 「完全非接触」を拡大

 各社はさらに非接触化を進める。スシローは注文商品を店内のロッカーから受け取るサービスを今後100店舗以上に増やす。支払いもクレジットカード決済で、店員と接することはない。

 くら寿司は、入店から会計まで店員を介さず利用できる完全非接触型店舗を増やしている。今後の新規出店はすべてこの完全非接触型とし、来年末までに既存店も改装して国内全店で導入する計画だ。

 会計の際に皿の枚数を自動で計測するシステムや、スマートフォンでの来店予約導入など回転ずし業界はコロナ前から省人化、省力化がキーワードだった。回転ずしの原価率は4~5割とされ、飲食店で一般的とされる3割程度より高い。コスト削減のため、省人化につながるITなどへの積極投資を続けてきたことが生きている。

 閉店した居酒屋跡に出店も

 一方で厳しい環境にあるのが居酒屋業態だ。居酒屋チェーン大手のワタミは全店の2割に当たる114店を3月末までに閉店する。一方で、回転ずしと並んで好調な焼き肉業態を強化し、レーンで料理を席まで運ぶなど回転ずしからヒントを得た「焼肉の和民」を居酒屋から切り替えて出店。1号店である大鳥居駅前店(東京都大田区)は、居酒屋からの業態転換前と比べ売上高が前年同期比2・8倍になった。ワタミは「主幹事業を焼き肉にも広げ、一本足打法からの脱却を図る」としている。

 民間調査会社の富士経済(東京)は、令和2年の回転ずし市場が前年比約1・3%増の6790億円と見込む。

 好調な業績を受け、回転ずし各社で出店攻勢をかける動きも出始めた。目立つのが都心部への出店だ。スシローは年間約30店舗、くら寿司は25~30店舗の新規出店を計画。両社とも、2割程度は都心部への出店だ。

 都心部への出店ラッシュの背景には、居酒屋などの閉店が続き、テナントに空きが出ていることがある。くら寿司の田中邦彦社長は「これまで都市部では見つからなかった広さの物件が出始めている」と攻勢を強める構えだ。都市部の店舗では、サラリーマンや若者など居酒屋やファミリーレストランの顧客層も取り込む狙いがある。

 市場は飽和状態と指摘されながら、IT化や新規メニュー導入などで成長を続ける回転ずし業界。いちよし経済研究所の鮫島誠一郎・首席研究員は「成長は今後も続く」としたうえで、「(ランチ営業を終え、ディナータイムへ移行するまでの)アイドルタイム利用をいかに伸ばせるかだ」と指摘する。

 賃料や人件費負担がかさむ都心部では稼働率を高める必要があり、「(アイドルタイム利用には)デザートやコーヒーを組み合わせた商品力の強化など、カフェの需要をどう取り込むかがカギになる」としている。

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