軟質素材で「ガラス製品」 困難な形状可能に
sid・清水勝明代表取締役
真空注型機メーカーのsid(エスアイディ)は、軟質素材を使ってガラスの質感を表現した「Harehare(晴れ晴れ)」ブランドの第3弾として花瓶を開発した。これにより技術的課題を克服、今後はガラスでは困難な形状の製品づくりに挑戦する。一方で近い将来の需要拡大を見越して販売代理店網も整備する。清水勝明代表取締役に展望などを聞いた。
--Harehareとはどんな製品か
「ガラスより透明度が高く、光を当てるときらきら輝く。その上、柔らかく、曲げても元に戻るので割れたり折れたりしない。また熱伝導率が低く、グラスに熱湯を入れても熱くなく、氷を入れても溶けにくく表面に結露もつきにくい。プラスチックは数カ月間、紫外線を受けると黄色く変色するが、Harehareは10年分受けても大丈夫なので、きれいにずっと使える」
--これまでに売り出した製品は
「断熱性に優れ、中に入れた氷が長持ちするワインクーラーと、どんなに熱くても、また冷たくても手に持てるグラスを昨年初めに販売代理店を通じて発売した。その1社のワームスは昨年11~12月の1カ月間、クラウドファンディングサイト『Makuake(マクアケ)』でグラスを販売した。応援目標の50万円に対し54万円強(支援者57人)が集まり、70~100個が売れたと思われる」
--手応えを感じている
「20年は代理店に500個売ったほか、マレーシアの不動産会社オーナーから金箔(きんぱく)を樹脂に入れ込んだグラス400個の注文が入り専用に生産した。金型を使用せずに高精度・スピーディーな樹脂成形を実現できるので小ロットにも、突然の設計変更にも柔軟に対応できる。このためワインクーラー、グラスにつぐ第3弾として近く売り出す予定の花瓶などHarehareだけでなく、受注生産にも力を入れる」
--市場開拓は
「見た目はまるで柔らかいガラスなので、特徴さえ認知されれば需要は高まり、『こんな製品をつくってほしい』との声が出てくるはずだ。このため販売代理店を募集し、市場開拓に力を注ぐ。実は、金箔入り製品は中国でも売れると判断し、販売促進の一環としてショールームを中国の四川省成都と広東省深センに昨春オープンした。しかし新型コロナウイルス感染拡大により、今は閉鎖を余儀なくされ稼働できない状況だ。当初の計画通りには行かないが、展示会には出展し販売機会を探っている」
--今後の展開は
「高真空の状態で独自の熱硬化性樹脂の液体をシリコーンゴムの型に流し込むことで、気泡がなく透明度も高い製品を生産できる。このためガラスでは生産できない形状のものを、しかも成形だけで鏡面をきれいに仕上げることができる。この独自技術を生かし、カットを増やした製品づくりに取り組んでいきたい。花瓶づくりを通して、この課題を克服できた」
【プロフィル】清水勝明
しみず・かつあき 1974年三愛(現sid)を設立し社長。75歳。東京都出身。
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【会社概要】sid
▽本社=埼玉県川口市前川2-32-1
▽資本金=2000万円
▽従業員数=20人
▽事業内容=真空注型機製造販売、樹脂部品製作