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「鬼滅の刃」業界も注目する“新たな手法” 興行収入歴代1位に 

 アニメーション映画「劇場版『鬼滅(きめつ)の刃(やいば)』無限列車編」の興行収入が27日までに324億円7千万円に達し、「千と千尋の神隠し」(平成13年)の316億8千万円を抜き、国内の歴代1位になった。

 「鬼滅の刃」は、漫画家の吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)さんが「週刊少年ジャンプ」誌に連載した漫画が原作。大正時代を舞台に、鬼に家族を殺されたうえ妹を鬼にされた少年が、妹を人間に戻すため鬼たちと戦う。人気に拍車をかけたテレビアニメ版の続編エピソードを映画化した。

 10月16日から最初の3日間だけで興収46億円を稼ぎ出すスタートダッシュを決め、その後も10日間で100億円超え、24日間で200億円超え、59日間で300億円超えと次々と最速の記録を更新し続けている。映画は10億円がヒットの目安とされる。「鬼滅の刃」は1本ですでに30本分を稼いだことになる。

作品に質とコロナ禍

 映画は集英社、ソニー・ミュージックエンタテインメントの映画関連の子会社であるアニプレックス、アニメーション制作のユーフォーテーブルの3社が製作し、アニプレックスと東宝が共同配給している。

 東宝の市川南常務は、「友情、家族への思い、敵である鬼の内面のドラマなど、日本人の琴線に触れるテーマ性があることが国民的ヒットの理由」と説明する。また、「洋画が公開延期となり、全国の映画館のスクリーン数と上映回数を最大に確保できた。また、在宅でコミックの読者とアニメ視聴者数が激増する中で公開できた」と、コロナ禍の特殊な状況が大きく作用していると付け加える。

 映画ジャーナリストの大高広雄さんも、「もともと100億円は見込まれていた作品だが、それをはるかに超えた。作品の質とコロナの状況が重なり生まれた記録であることは確か」と話す。

観客の心をつかむ特典

 大高さんは「興収の推移を見ると、勢いを保ったままなのが驚異的。過去に例がない」と指摘する。例えば単価の高い体感型の席が加わった今月26日の興収は、5億5千万円で、前週の19日の1億8千万円より3倍近くに増えた。「隔週で始めた入場者特典グッズの配布が功を奏している。観客の心理を知り尽くしたアニプレックスならではの戦略。グッズ目当てのリピーターも少なくないでしょう。配布初日に劇場に行列ができているのを目撃した」という。

 東宝の市川常務も「宣伝戦略の中でも入場者特典は緻密に計画され、学ぶところが多い」とアニプレックスの手法を絶賛する。

興行手法を変える

 大高さんは、「『鬼滅の刃』は、興行史上画期的な最初の作品だが、最後ではない。前例のない事態が起きたとき、想定外の新しい記録は生まれるでしょう。それが、映画興行のおもしろいところ」と話す。

 東宝の吉田充孝映画営業部長は、「今後、余裕がある時期に公開して多数の上映回数を確保するやり方が、スタンダードになるのかなと思う」と話し、映画興行のスタイルが変化する可能性を示唆する。

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