副業、大手も制度着々…コロナ禍、働き手は空き時間活用
新型コロナウイルスの流行で在宅勤務など働き方が見直される中、副業への注目が高まっている。コロナをきっかけに企業が業務を見直し、外注可能な仕事が浮き彫りになったことに加え、働く側も通勤時間が無くなって生まれた時間を有効活用したいというニーズが生じているからだ。社員の副業を認めるだけでなく、副業人材を受け入れる大手企業も出始めた。ただ、労働時間の管理など新たな課題も生まれている。
もともと社員の副業を認めているヤフーは7月、他社の副業人材の募集を始めた。「業務のマンネリ化に活を入れる」(人事担当者)ことがねらいだが、100人の枠に小学生から80代まで、20カ国から約4500件の応募があった。社内の評判も上々で、副業人材と協業したいという声が相次いでいるという。
KDDIは6月、就業時間の約2割を目安に別の部署で業務できる「社内副業制度」を導入した。今後はグループ会社間でも副業できるよう制度を拡充させる方向だ。
企業が副業制度を導入するのは、副業を通じて得た新たな知見を自社に持ち帰ることで、社内改革や新規事業の創出などの効果が期待できるからだ。外部人材をきっかけに他社と協業がしやすくなるといった利点もある。
フリーランスと企業のマッチングを手掛けるランサーズによると、常時雇用とフリーランスを掛け持ちする副業者数は、今年2月時点で約409万人。近年はやや減少傾向にあったが、みずほ総研の酒井才介主任エコノミストは「コロナで状況が大きく変わった」と話す。これまでは副業人材をうまく活用できない企業が多かったが、コロナ禍で在宅勤務を導入したことをきっかけに業務を見直す企業が増加。「外部人材に求める役割が明確になった」(酒井氏)のだという。
副業は起業したい人にとっても便利な制度だ。ITを活用した野生鳥獣肉(ジビエ)の流通管理サービスなどを手掛ける「ハンテック」の川崎亘代表は友人らと3人で同社を設立。3人とも別の会社に籍を置きながら副業で起業した。川崎代表は「別の収入源があれば、収益化に時間がかかるビジネスにも挑戦できる」と話す。
ただ、副業には課題もある。その一つが長時間労働の問題だ。厚生労働省は8月末、従業員からの自己申告に基づいて本業と副業の労働時間を通算して管理するガイドライン案を示した。労働基準法は「事業場が異なる場合も労働時間を通算する」と定めているためだ。情報漏洩(ろうえい)や本業がおろそかになることへの企業の懸念も根強い。定着には長時間労働の是正に加え、企業の不安を取り除くような対策が求められている。(高木克聡)