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破綻ドミノ迫るアパレル 消費者の価値観変化にコロナ禍が拍車

 「作りすぎ」慣行 断ち切れるか

 こうした傾向を追い風にしたのが、ユニクロを代表格とするファストファッションと呼ばれるメーカーだ。製造から販売まで一気通貫で手掛け、中国など人件費の安い国で製造し、中間コストをカットして価格を抑える。その一方で顧客の反応を商品企画に素早く反映させ、多くの消費者を取り込んでいった。

 しかしそのファストファッションでさえ、電子商取引(EC)の普及という激震に襲われている。消費者は安くて品質の良い商品をさらに入手しやすくなる一方で、メーカー間の競争は激化し、リアルな店舗の収益力が低下している。

 アパレル大手にとってより深刻なのは、業界に長年はびこってきた「作りすぎ」が一向に改善されていないことだ。

 市場が縮小しているにもかかわらず、多くのメーカーは商品を過剰に販売し、売れ残りをセールで割り引く慣行を改めようとしなかった。こうした慣行が値引き拡大を招き、正価への不信や消費意欲の減退にもつながっている、との指摘は根強い。

 日本で販売される衣料品の実に半分は売れ残り、廃棄処分されているといわれる。コロナ禍による売れ残りの増加で、「内在していた供給過剰の矛盾が一気に現実化した」(ワールド)形だ。

 衣料品の大量廃棄は、環境保護の観点からも問題視され、最近はブランドの価値にまで悪影響を及ぼすようになっている。

 三陽商会の大江氏も「悪しき」慣行との決別を目指している一人だ。「秋冬の仕入れは徹底して絞った。欠品は覚悟の上だ」と改革への決意を強調する。

 ただしコロナ禍が収束したとしても、どこまで客足が戻るかは見通せない。在宅勤務の定着などで軽装化が進み、衣料品への支出がさらに落ち込むとの見方もある。新しい生活の在り方が定着していく中で、アパレル業界でメーカーの淘汰(とうた)が進むことは確実。ここ1、2年の間に悪循環を断ち切り、新たなビジネスモデルを確立できるかが明暗を分けそうだ。(井田通人)

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