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ベンチャー新調達手段として株式投資型クラウドファンディングに注目集まる

 ベンチャー企業の資金調達手段として、株式投資型クラウドファンディング(CF)に注目が集まっている。非上場企業がCFサイトを通じて不特定多数の人から少額ずつ資金を集める手法だ。新型コロナウイルスの感染拡大で景気が落ち込む中、金融機関による融資や、ベンチャーキャピタル(VC)からの出資によらない新たな資金調達手段として利用する企業が増えている。

 1カ月で5000万円

 地方産品を使ったカタログ通販を手がける地元カンパニー(長野県上田市)は、事業拡大資金を得るため、株式投資型CFサイト運営のイークラウド(東京都中央区)を利用した。

 現在、全国約600社との取引があるが、新規の取引先開拓は容易ではない。カタログ通販は、知られざるご当地の逸品を見つけることが成功の鍵を握る。成長に合わせて事業を拡大するためには相応の資金も要る。だが、金融機関の融資では審査に時間がかかるうえ、コロナ禍による投資環境の変化からVCも新規投資には及び腰だ。迅速に資金調達する手段として、児玉光史社長はCFによる資金調達を選択した。

 地元カンパニーは7月29日から8月27日までサイト上で出資を募り、312人の個人投資家から募集上限額となる5000万円を集めた。3000万円の目標を大きく上回る成果を得た。全国には約1700の自治体があるが、児玉社長は「少しでも早くすべての自治体の企業と取引ができるようにしたい」とし、調達資金は営業やマーケティングの人材採用などに充てる考えだ。

 ロボットベンチャーのドーナッツロボティクス(同港区)も、日本クラウドキャピタル(JCC、同品川区)の株式投資型CFサイトを通じて、複数の個人投資家から2800万円を得た。音声を認識するマイクを搭載し、音声認識技術により会話相手のスマートフォンに文字を表示する「スマートマスク」の開発費に充てた。

 新型コロナの影響で開発していたロボットの納品が延期となり、スマートマスクの開発には会社の存亡がかかっていた。追加の資金調達に苦慮する中、小野泰助社長はJCCの大浦学最高執行責任者に相談。大浦氏からは「このご時世だから、(思い切って)がんがんいこう」と資金集めの支援を得た。

 リスクを取れるか

 JCCは株式投資型CFの草分けで、2017年4月のサービス開始からこれまで100件超の実績がある。株式投資型CFはほかに、SBIエクイティクラウド(同港区)、ユニコーン(同新宿区)も手掛けており、新規参入企業も増えている。

 CF大手のキャンプファイヤー(同渋谷区)傘下のDANベンチャーキャピタル(同中央区)もそうした一社だ。第1号案件として、先払いで食事をギフトとして贈れるウェブサービスを手掛けるGigi(ジジ、福岡市中央区)が8月27日から資金を募っている。

 日本のベンチャー企業への投資額は年間約4000億円。ただ、この額は米国の40分の1、中国の10分の1しかない。ベンチャー企業のビジネスは新規性が強く、大手が参入する前に一定のシェア(市場占有率)を確保することが成功のための絶対条件となるだけに、事業展開を一気に加速するには潤沢な資金の調達が欠かせない。

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