運営難、消えゆく弱者支援 NPO法人・団体 多くが給付受けられず
新型コロナウイルスでNPO法人も窮地に陥っている。緊急事態宣言が解除されても活動中断の影響は大きく、資金繰りに苦慮する団体も多い。関係者は「NPOが対面で生み出してきたつながりや、社会的弱者への支援が途切れてしまう」と不安を抱えている。
「集いの場」が閉鎖
4日、民家を間借りする宇都宮市のフリースクールに子供の姿はなく、作りかけのジグソーパズルが置かれていた。
不登校の子供を支援するNPO法人「キーデザイン」の土橋優平代表理事(26)は、4月以降の活動休止状態にもどかしさを募らせる。「おばちゃんがおにぎりを差し入れたり、大学生も立ち寄って一緒に遊んだり、『集う場』ができて、つながっていたのに」
オンラインの家庭訪問も導入したが「顔を合わせないと、子供のちょっとしたしぐさに表れる感情に気付きにくい」。
NPO法人「宇都宮まちづくり市民工房」は、さまざまな市民活動に使う施設を管理している。閉館に追い込まれた施設は再開後も利用者が少ないままだ。安藤正知理事長(59)は「元の状態に戻るには時間がかかる。人と接する活動ほどダメージは深刻で、集まる機会を失った市民の孤立が進むのでは」と案じる。
環境問題に取り組む団体も例外ではない。栃木県佐野市のNPO法人「エコロジーオンライン」は、マダガスカルでの事業が都市封鎖で頓挫。感染が拡大する現地にマスクなどを届けている。上岡裕理事長(60)は「社会の担い手としてNPOが果たす役割は大きい。多様な活動を評価してほしい」と強調する。
活動自粛による事業休止や休館は、収入減に直結する。「とちぎボランティアNPOセンター」の調査では、栃木県の72団体のうち約8割がコロナ禍で「影響が出ている」と回答。事業中止で収入が1500万円減った団体もあった。
実情考慮されない
NPO法人は、中小企業を支援する「持続化給付金」の対象だが、支給を受けるのに必要な売り上げの減少に、寄付金や助成金は含まれない。NPOに詳しい岡山県の大山知康弁護士(43)は「中小企業への給付を想定した制度で、実情が考慮されていない」と指摘。NPO向けの柔軟な支援を訴える。
法人格を持たない団体も厳しいのは同様だ。宇都宮市は任意団体向けに最大10万円の助成金制度を創設した。「まちづくりを担う市民のニーズに応えたい」と担当者。
NPO法人「とちぎユースサポーターズネットワーク」は、県外の若者を呼び込む事業の見通しが立たない。岩井俊宗代表理事(37)はNPOを「虫眼鏡」に例える。地域に潜む小さな問題を見つけ、知恵を出し合うのは対面が基本だ。「誰もが自分を守ることに精いっぱいで、人と支え合う喜びを忘れてしまわないだろうか」と心配する。
地域に寄り添い、課題に向き合ってきたNPO。大山弁護士は「いくつもの小さな明かりが消えかかっている。社会を照らし、隙間を埋める存在を忘れてはならない」と警鐘を鳴らしている。