「仮面ライダーを救い、コロナ危機を乗り越えよ」 東映ハイテク大使館の挑戦
「仮面ライダーは着ぐるみですから、中に入って動いているスーツアクターにとって、夏の暑さ対策が、長年の大きな課題でした。ハイテク大使館の力で、仮面ライダーを暑さから救おう、というプロジェクトを進めているところなんです」
酷暑によるスーツアクターの心身への負担は大きく、これまでは休憩中にスーツを脱がせて氷で身体を冷やしたり、小さなビニールプールを撮影現場に置いて、水の中で身体を冷やしたりしていたという。
“アナログ”なこの対処法に、ハイテク大使館が動く。社内外から、暑さ対策のアイデアを募ったところ、他企業や医学者らも参画を表明。
「熱を逃すスーツを作るための新素材がある」という繊維メーカーからの技術的な情報や、「手のひらを急激に冷やすと暑さを軽減できる」という医師からの医学的な情報などが寄せられた。
「これらのアイデアを実際に撮影所でテストしていき、これから夏に向けてハイテク大使館で具体策を練り、順次、実現していく予定です。ここで得られた対策は、グループ内だけでなく、着ぐるみ関連の業務に携わる人たちを救うことにもつながるはず」と白倉さんの構想は広がる。
映画館を守れ
現在、上映の自粛などで映画館を直撃している新型コロナウイルス問題の対策にも、ハイテク大使館は動き出しているという。
「映画を作っても、その作品を上映する映画館がなければ意味がありません。もちろん都市部のチェーンのシネコンを守る対策も考えなければなりませんが、今は、弱い地方の小さな映画館を守ることが最も重要だと考えています」と現状に頭を悩まし、憂えている。
コロナに打ち勝つ秘策はあるのか?
「現在、ハイテク大使館でその対策の構想を練っているところ。夏に向けてその対策を打ち出していければ、と考えています。例えば夏までにコロナ問題が終息すれば、現在、公開延期になっている春の新作を一気に夏に公開できるんです」
白倉さんは1990年、東映入社。東映テレビ・プロダクション社長、東映東京撮影所長などを歴任してきたが、長らく仮面ライダーシリーズのプロデューサーを務めてきたことで知られる。
幼い頃から仮面ライダーの大ファンだった白倉さんは、その影響で就職先に東映を選んだ。入社試験の役員面接で、当時の仮面ライダーの制作の在り方について自分の考えを述べたという。東映幹部にとっては、耳の痛い批判とも受け取れる意見だったが、その結果、白倉さんは合格している。
このとき白倉さんは、苦言ではなく、仮面ライダーをもっと面白く夢のあるドラマにするためにと、こんな提言をしている。
「撮影現場と外部との間に立ち利害を調整することがいかに大変かということ。自分がそうした“板挟み”の役割をもって任じたい」
東映に入社し、約30年が経ったが、このときに語った考えが、今、ハイテク大使館で生かされようとしているとはいえないか。
仮面ライダーを暑さから救いたい…。
コロナから映画館を守りたい…。
企業のイノベーションだけではなく、社会や文化のイノベーションも視野に入れたハイテク大使館の今後の活動に注目していきたい。