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人工呼吸器を中小も相次ぎ増産 国内外から注文殺到

 新型コロナウイルス感染拡大で重症化した患者に使う人工呼吸器。中小の医療機器メーカーでも増産に取り組むところが相次いでいる。経済産業省関東経済産業局などもサイトを通じて、新規参入を呼び掛けるが、世界規模での部品の争奪戦になっており、生産に苦慮するところも出ている。

 国内外から注文殺到

 三幸(さんこう)製作所(さいたま市西区)には3月中旬から人工呼吸器や酸素吸入器の注文が国内外から殺到している。同社は人工呼吸器を年間60台程度生産しているが、人手が足りないため、退職した社員にも声を掛けて人手を確保。4~5月で100台生産する。

 コーケンメディカル(東京都文京区)も、救急車の車内で使う人工呼吸器の注文がスイスなどの各国から数千台単位で入っている。福島市の工場は年間350台の生産能力を持つが、現在は約2倍に引き上げて対応している。メトラン(埼玉県川口市)もベトナムから4000台を受注しており、現地の工場などで生産を急ぐ。

 もともと人工呼吸器などの医療機器の生産は手作業による部分が大きく、急に大量注文が入っても生産が間に合わない。そのため、関東経産局と中小企業基盤整備機構(中小機構)関東支部は協業支援サイト「オープンイノベーション・マッチングスクエア」を通じて、医療機器やマスク、消毒液などの生産に協力できる企業を公募している。

 ただ世界的な感染拡大で人工呼吸器など医療機器をめぐる争奪戦が激化。部品の調達も日を追うごとに難しくなっている。機種にもよるが人工呼吸器の場合、1台当たり少なくとも200点の部品が必要とされる。コーケンメディカルの松井英一社長は「調達できないからと言って簡単に調達先を変えられない」と話す。

 従業員に細心の注意

 人工呼吸器や人工心肺装置は薬事法上の高度管理医療機器に分類され、厚生労働省所管の独立行政法人、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査、厚労相による薬事承認が必要だ。しかも医療機器は厚労相が承認した製造方法通りに製造しなければならない。

 人命に関わる医療機器ゆえの規制だが、「ねじなどの細かな部品は全く同じものを別の会社で作ってもらうことはほぼ不可能」(松井社長)のため、別の調達先の部品を使う場合、改めてPMDAへの審査が必要となる。

 それでも多くのメーカーでは、生産に携わる従業員を複数のグループに分けたり、公共交通機関で通勤していた従業員を毎日社用車やレンタカーで送り迎えたりするなど、感染者が出ても操業に影響が出ないように細心の注意を払っている。

 「安心して長く確実に使っていただけるように、少しでも早く、一人でも多くの患者へ届けたい」(三幸製作所の担当者)。中小医療機器メーカーにとっての新型コロナウイルスとの戦いはこれからも続く。(松村信仁)

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