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福岡屋台を救え 「伝統の灯を守りたい」天神の屋台大将らネットで資金募集 

 決められた時間外は歩道上から屋台を完全撤収しなければならない。時間を前倒ししてランチ営業することやテイクアウトも市条例で禁止されている。

 目標金額は500万円で寄付は1千円から。寄付してくれた協力者へのリターンは、きっぷ1枚でドリンク1杯+屋台おすすめメニューが楽しめる「屋台きっぷ」など11通り。

 CFのアドレスは以下の通り。https://camp-fire.jp/projects/view/257408

 「どっから来たと?」

 鼻の頭を赤くした常連客とおぼしきおっさんが、隣に座った観光客に博多弁で話しかける。

 若いカップルも家族連れもみな、うれしそうに北海道だ、名古屋だと答えるあの光景が、今はない。

 夜の帳(とばり)が下りるころ、九州一の繁華街である天神エリアには、色とりどりの看板に灯がともり、食欲をそそる匂いが立ち込める。開店前から行列ができ、暖簾(のれん)をくぐると大将の「いらっしゃい!」という威勢の良い声が辺りに響き渡る。

 産経新聞九州総局長として赴任した平成26年7月からの4年半、人脈も土地勘もなかった江戸っ子の私は、この屋台で育てられたといっても過言ではない。博多弁もここで知り合った常連客に鍛えられて身につけた、つもりになっている。

 感染症はいずれ収束するだろう。だが、廃業した屋台は戻って来ない。やってみなければ分からないノウハウがある、だから新規の屋台もハードルが高い。

 風物詩として、長く愛されてきた庶民文化は、それを支える人々があってはじめて、未来に継承されていく。吹き荒ぶ感染症の嵐によって、いつ消えるか分からない儚(はかな)い運命にしてはならないのである。

 福岡天神地区の屋台の歴史は終戦直後に始まる。その後、全国で路上営業の取り締まりが広がる中、天神地区ではいち早く組合を発足し、国への陳情活動などでようやく営業権を認められた苦難の歴史がある。

 屋台全盛期、福岡市には約400件の屋台があったが、現在は後継者不足や道路規制などで100件をきり、天神エリアも約40件を数えるほどになった。

 天神エリアの屋台は独自の進化を遂げ、焼きラーメンなど多種多様なメニューを生み出してきた。公募によるフレンチ系といった個性的な「ネオ屋台」が登場するなど、発展し続けている。

 コロナウイルス禍が落ち着いたら福岡を訪れ、少し腰を据えて屋台めぐりをしようかと思う。

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