「農家の助っ人」最先端プロジェクト進行 野菜の収穫時期、AIが予測
人工知能(AI)を使って野菜の収穫時期を調整したり、1~2カ月先の市場価格を予測したりする最先端プロジェクトが進んでいる。人件費などを省いて生産から販売まで効率的な農業の実現を目指す。AIが高齢化や人手不足に悩む農家の助っ人となるかどうか注目される。
愛知県豊橋市の豊橋技術科学大学。ビニールハウスの中では高さ2メートルに育ったトマトの葉に青い光が当てられていた。「葉が発する光の画像から光合成する際にどれぐらいストレスがかかっているかが分かります」と高山弘太郎教授。スマートフォンには光合成の速度がグラフで表示され、今後の成長速度も予測できるという。
生育中のトマトの二酸化炭素(CO2)吸収量も計測。吸収が多いほど光合成しており、成長が望める。作物の色づきや大きさの画像も撮影しAIで分析。CO2の量や気温を制御して収穫量を増やしたり色づきを早めたりできるようになった。
収穫時期が正確に分かれば必要なパートの人数など労務管理が効率的にできる。高山教授は「野菜の状態を測ると、いつ収穫できるか分かる。農家が勘でやってきたことが数値化できるようになった」と話す。人件費を3割減らすのが目標だ。
一方、豊橋技術科学大学の後藤仁志准教授とIT企業「ファームシップ」は昨年11月、AIを使って将来のレタスの市場価格を予測するシステムを開発した。東京都大田市場における過去約15年分のレタスの市場価格とその時の天気や気温、出荷量、産地などの情報を入力し分析した。
価格は毎年変動するが一定の周期性があることが分かり、その前後の動きから1~2カ月先の市場価格が予測できる。レタスは出荷まで約2カ月かかる。後藤准教授は「高値の時期が生産の早い段階で分かれば、その時期を狙って計画的に生産できる。食品ロスも減らせる」と話す。将来的には他の野菜にも応用したい考えだ。