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台風の被災地に駆けつけ給油 震災の経験を生かし開発した「移動式スタンド」

 災害でガソリンスタンドが被災し、燃料供給がストップする事態を防ごうと、25年前に阪神大震災が起きた兵庫県の会社が、タンクローリーを使った移動式の給油機を開発した。誕生のきっかけは東日本大震災の支援活動。昨年9月に関東を襲った台風15号の被災地でも威力を発揮した。資源エネルギー庁も今後の災害での貢献に注目している。(小林宏之)

 兵庫県姫路市の燃料供給会社「横田瀝青(れきせい)興業」が開発したのは「どこでもスタンド」。燃料を積んだタンクローリーと移動可能な給油装置を直接つなぎ、どこでも必要な場所に迅速に給油所を開設できる。

 発案した横田勝好社長(58)は東日本大震災が発生した平成23年3月、自家発電用燃料が枯渇しかけた大手通信会社の要請で東北入り。燃料供給ルートがなかなか復旧せず、約2カ月にわたって姫路と現地を往復し、ガソリンや軽油などの供給支援に当たった。

 津波の被災地ではガソリンスタンドが水没して機能不全に陥ったため、給油はタンクローリーからドラム缶へ、さらにドラム缶から小型携行缶に移す手作業が必要だった。「ガソリンは揮発性が高く、静電気でも引火しやすいので極めて危険。ドラム缶を使うのも慣れない人には重労働で、非効率だ」。この経験が、開発のきっかけとなった。

 実際、津波被災地では燃料の危険な取り扱いが横行したため、総務省消防庁は25年、タンクローリーからの直接給油を容認するガイドラインを策定。横田さんはこれを踏まえて開発に着手し、大手計量器メーカーの協力を得て26年3月に1号機を完成させた。

 だが当初、「反応は冷ややかだった」という。それでも各地の防災訓練に自ら装置を持ち込んでPR。さらに資源エネルギー庁の支援を受け、安全性を高めた改良版を30年に発表した。消防庁は同年、改良版の使用を認める趣旨の通達を全国の消防などに出した。

 併せて阪神大震災での支援経験が豊富な兵庫県石油協同組合などと、災害時に燃料供給部隊として活動する共同事業体を結成。昨年9月、資源エネルギー庁の要請を受け、台風15号の襲来でガソリンスタンドの休業が続く千葉県芝山町へ初めて出動した。

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