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韓国人激減で対馬が観光再構築 国内スポーツ誘致、韓国との交流も維持図る

 日本と韓国の国境に位置する日本海の離島、対馬。九州や本州よりも韓国の方が近い事情もあり、昨年は約41万人もの韓国人客が押し寄せたが、今年9月は前年比で9割以上も激減し、島の観光産業は大きなダメージを受けている。そんな長崎県対馬市で今、新しい観光の姿を模索する動きが相次いでいる。市は「韓国への依存が大きすぎた」との反省から日本人客の誘致に注力する方針で、スポーツイベントや合宿による誘致も視野に入れる。一方、韓国に対しては「切っても切れない隣人」とし、引き続き交流に取り組んでいく構えだ。(上野嘉之)

 表情豊かな大自然

 記者は対馬で10月19日に開かれた「国境サイクリングIN対馬」に出走し、島の観光の現状を取材した。

 今年で3回目のサイクリング大会は、広い対馬を北から南へ縦断し、名所や見どころを網羅する123キロのコースが魅力だ。「異国の見える展望台」からは、海を隔てた韓国・釜山のビル群がはっきり見えた。対馬と九州本土は130キロ以上離れているが、釜山までは約50キロ。特にこの日は、島民が「韓国がこんなによく見えるのは年に数回」というほどの幸運にも恵まれた。

 自転車を漕ぐと、対馬の豊かな自然を体感できる。島北部の海岸線では、荒々しい断崖の景観に目を見張った。その後、水田が連なる里山風景を走り、岩肌に苔むす渓谷を抜けると、小さな湾と島々が連なるリアス式海岸の絶景が現れた。ゴールは賑やかな市中心部だ。

 このコースへの評価は高く、ゲストとして走ったスポーツトラベラーの福田萌子さんは「島のさまざまな表情を感じられる素晴らしい大会」と絶賛。対馬観光の潜在力を証明するイベントとなった。

 スポーツ誘致に可能性

 対馬市は、スポーツを通じた観光誘致「スポーツツーリズム」に可能性を見いだしている。

 同市は、市町村合併を促進した「平成の大合併」により平成16年に誕生。しかし合併前の旧6町時代から、離島振興の補助金などを活用し、島内各地に運動場や体育館が整備された。現在、市の人口は3万人余りで過疎化が進むが、島内には全天候型トラックの陸上競技場をはじめ、多数の体育館や野球場を擁する。

 市観光商工課の阿比留正臣課長は「例えば雪が積もる地域の大学や高校のチームに、対馬で合宿してもらいたい」と構想を描く。周囲を流れる対馬暖流の影響で、気候は比較的温暖。積雪も少ない。

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