10月からの消費増税に伴う軽減税率の仕組みが話題になっている。消費税は8%から10%へと引き上げられるが、新聞と酒類・外食を除く食品は8%に据え置かれる。これを軽減税率という。低所得者の負担が重くならないように、生活必需品である食品の税率を低くとどめる……ということで、一見すると正しそうな制度に見えるが、この制度が原因で、小売業界と飲食業界は混乱の極みにある。(中嶋よしふみ,ITmedia)
すでに各種メディアで目にした人も多いと思うが、おもちゃがセットになったマクドナルドの「ハッピーセット」は消費税何%か? カードがオマケのプロ野球チップスは何%か? そして外食は10%、持ち帰りは8%という区別が付けられたため、何をもって「持ち帰り」とするのか? 遊園地内で食べ歩きをする場合は何%なのか?
説明すらバカらしいのでこれ以上言及しないが、このように曖昧な境目をどうするか一つ一つに線引きが必要となり、事業者側も税金を徴収する国税庁も対応に追われている。
多くの人は軽減税率のバカらしさを実感していると思うが、一方で軽減税率に賛成する人の割合は、世論調査を見る限り極めて多い。消費税の引き上げが見送られた16年の時点で、高いものでは70%超、2018年末時点でも50%前後と、軽減税率は高い支持を得ている。
先に挙げた8%か10%かの細かな区分は、事業者にとって重要な話ではあるが、それ以上に軽減税率は深刻な問題を多数抱えている。
まずは税収が1兆円も減ることだ。一方で軽減税率は所得制限がないため、その1兆円は経済的弱者に限定せずに還元される。さらに複雑な制度によって徴税コストが増加する。そして元々収益性が低く、その反面で多数の雇用を抱える小売業と飲食業に手間とコストが発生してダメージを与える。
多くのメディアは軽減税率の複雑さとバカらしさを面白おかしく取り上げているが、経済にこれだけ深刻なダメージを与える制度であることは、あまり報じていない。早急に撤回すべきであることは明白だ。
では海外ではどうなっているのか?
多くの国で消費税20%を超えるEUは、元々独立した国の集まりであるため、消費税率も軽減税率もバラバラだ。そんな中で異彩を放つのが、消費税25%とトップクラスに高い水準でありながら軽減税率を導入していないデンマークだ。