日産・ルノーにやまぬ隙間風 スナール会長ら、トヨタ車で総会に
日産自動車は7月25日、営業利益が前年同期比98.5%減だった2019年4~6月期連結決算と、1万2500人以上の従業員を削減する構造改革を発表した。その内容が衝撃的だったため目立たなかったが、日産は同日の取締役会で重要な規定を導入している。筆頭株主の仏自動車大手ルノーと利益相反の恐れがある議案の決議に、ルノーから受け入れた取締役を参加させないというものだ。背景には経営統合に関する駆け引きがあり、6月下旬の定時株主総会をめぐってのルノー側の“振る舞い”への不信感も強い。
人事めぐり駆け引き
株主総会で会社側が提案する議案が否決されることはめったにない。会社側は議案が可決されるために大株主の支持を取り付け、万端の準備を整えて総会に臨むのが一般的だからだ。
だが、6月25日に開催された日産の総会は、直前までもめた。企業連合を組むルノーがある議案に棄権する意向を伝えてきたとして、日産は6月10日、「大変な驚きだ」との声明を発表した。
それは、日産が前会長、カルロス・ゴーン被告の事件を防げなかった反省として、社外取締役を中心に「指名」「監査」「報酬」の3委員会を設置する「指名委員会等設置会社」に移行する議案だ。“企業の憲法”とも言える定款の変更を伴うため、可決には出席株主の3分の2の賛成が必要。日産株の43%を保有するルノーが総会に出席したうえで棄権すれば、成立は絶望的になる。
日産は、外部有識者らでつくる特別委員会が数カ月間、議論した結論を踏まえて移行を決定。この総会で新たに就任する社外取締役も、新しい会社の形態を前提にしている。コーポレートガバナンス(企業統治)改革が頓挫すれば、西川(さいかわ)広人社長らの責任が問われるのは必至だった。
ルノーが“最強のカード”をちらつかせて迫ったのは、委員会人事の修正だ。ルノーからは4月の臨時総会でジャンドミニク・スナール会長が、6月の定時総会でティエリー・ボロレ最高経営責任者(CEO)が、日産の取締役に就任。しかし日産は、スナール氏を指名委員会委員とする人事案を示した一方、ボロレ氏のポストは用意していなかったからだ。