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7時間で100万円も…大手企業、ネット資金調達のわけ

 食品や日用品の大手メーカーが、インターネット上で不特定多数の人から事業資金を募る「クラウドファンディング(CF)」の活用を本格化させている。個人やベンチャー企業の資金調達手段という側面が強かったCF。大手企業が積極化させている背景には、詳細なデータ収集によるマーケティング(市場調査)への期待がある。(岡本祐大)

 お金に困っている?

 6月、白鶴酒造(神戸市東灘区)が限定発売した日本酒「別鶴(べっかく)」。創業約270年の老舗にとって異例ずくめの商品となった。

 日本酒離れが指摘される若い世代がターゲット。開発にあたったのは20、30代の若手社員のみ。さらに100万円を目標に、初めてCFで資金を募ったのだ。

 「お金に困っているように見られないか」。昨年9月、白鶴酒造の会議室。商品開発本部の佐田尚隆主任(33)がCFの活用を提案すると、役員らから懐疑的な声も上がった。100万円は、出資に頼らなくてもいい金額だ。

 開発チームには別の狙いがあった。消費者の反応を幅広くつかむ「テストマーケティング」ができることだ。店頭や消費者モニターに感想を聞くこれまでのマーケティングでの調査対象は基本、日本酒の愛好家。国内出荷は伸び悩み、主力購買層は60、70代というなか、普段日本酒を飲まない層に訴える必要があった。そこで目を付けたのがCFだった。

 サイト上では、独自開発した酵母の特徴、何百回と繰り返した試作をストーリー仕立てで紹介。「若い人の挑戦に心打たれた」といったコメントが寄せられ、100万円は7時間で到達した。佐田氏は「出資者の半数は20、30代。製品開発の狙いが間違っていないことがデータからも分析できた」と話す。

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