「三日三月三年」我慢させてはいけない
しかし、その仕事に直面して手足を動かしているのは、その部下本人なのだ。現に仕事をしている部下が違和感や抵抗感を覚えているのだから、それを直視しないでどうすると言うのだ。違和感や抵抗感を聞いてこそ、それをふまえたリーダーシップを発揮することができ、部下を巻き込めることを忘れていないか。
20年来ビジネススキル演習を実施し、企業をサポートしてきた経験をふまえると、違和感や抵抗感を覚えるケースは、仕事をする際のモチベーションファクター(意欲が高まる要素)と自分の自然体のモチベーションファクターにギャップがある場合がほとんどだ。
私はモチベーションファクターを牽引(けんいん)志向と調和志向に分けている。肉食系と草食系、狩猟型と農耕型と捉えればイメージを持ちやすい。例えば、周囲の意見をよく聞いてリスクを最小限にしていくことで意欲が高まる調和志向のモチベーションファクターの持ち主が、他の部署の意見は聞かず独自の考えでリスクを怖がらずにチャレンジしなければならなくなったら、ストレスを覚えて、違和感や抵抗感を覚えるのは当たり前だ。
仕事と自分のモチベーションファクターにギャップを感じたら、自分のモチベーションファクターの発揮の仕方を変えるか、仕事のモチベーションファクターに合致している人と組むか、いよいよ最後は担当する仕事を変えればよい。適材適所とは仕事と自分のモチベーションファクターを一致させるという意味で、「三日三月三年」は、モチベーションファクターの不一致を見極めるために適当な期間だと私は言いたい。
◇
【プロフィル】山口博
やまぐち・ひろし モチベーションファクター代表取締役、慶大卒。サンパウロ大留学。第一生命保険、PwC、KPMGなどを経て、2017年モチベーションファクターを設立。横浜国立大学非常勤講師。著書に『チームを動かすファシリテーションのドリル』『ビジネススキル急上昇日めくりドリル』(扶桑社)、『99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100』(講談社)。長野県出身。