「マルちゃん 赤いたぬき天うどん」 定番ブランドの領土死守する一手
チャレンジャーにはチャンス、守るには厳しい環境
考えてみると、この環境はチャレンジャーにとっては一旗揚げられるかもしれないというありがたいものですが、「定番」を守る側からするとかなり厳しい戦いです。各社、定番商品でありながらも「新鮮さ」を演出する、新フレーバーや季節・ご当地限定などのあの手この手で必死です。
逆説的には、このあの手この手があってはじめて「定番ブランド」一族の命脈を守っている状況なのです。実際に今回紹介する東洋水産「マルちゃん 赤いきつねと緑のたぬき」シリーズと真っ向競合する日清食品「どん兵衛」シリーズは、現在「レモン仕立ての塩豚ねぎうどん」や「釜たま風うどん」、「汁なしピリ辛肉みそうどん」など、これでもかの新商品攻勢で勝負しています。
バイヤーとメーカー、職業観を賭した信念の戦い
コンビニ本部の視点で見れば、非常に短いサイクルで商品を入れ替え、売り場を常にフレッシュな状態に保つ手法が生活者から支持され、コンビニの隆盛を支えてきたわけです。熱き信念に支えられたバイイング戦略です。
一方のナショナルブランド側にしてみれば、自社の看板商品には万全の自信があるわけですから、できれば一番おススメの長年にわたって磨き抜かれた「定番」メニューこそを愛して欲しいという思いが強くあります。まして、新フレーバー一つ出すだけでも、そのための原料仕入れ、製造工程、パッケージデザイン・印刷等々大きな投資が必要なわけですから事情は切実です。実際に、かつての定番商品の中には、バイヤーがメーカーに浴びせる“千本ノック”で自らの本質を見失い、疲弊してしまった例も少なからず見受けられます。例えば東日本で販売を取りやめた明治「カール」なども、いろいろな事情はあったに違いないですが、この厳しい環境が影響したように思います。