高論卓説

理解と期待を促す大きな効果 安倍総理の「うなずきのスキル」

 安倍晋三総理の記者会見の模様が頻繁に報道されている。気づいている人は多くいるに違いない。フレーズごとにゆったりと区切っている。それも月を経るごとに、区切るフレーズが短くなっているように、私には思える。実は、これは、フレーズごとに間(ま)をつくり、理解を促したり、次に何を言うのか聞き手に期待させたりするという、とても簡単だが効果を発揮する表現スキルの一つだ。発言内容についての是非や賛否を申し上げたいわけではなく、スキル自体に着目している。(山口博)

 例えば、新元号「令和」の記者会見の中では、次の25秒の発言の中で、実に13回の間をおいている。「平成の時代のヒット曲に(間)『世界に一つだけの花』という歌がありましたが(間)、次の時代を担う若者たちが(間)、明日への希望とともに(間)それぞれの花を(間)大きく(間)咲かせることができる(間)。そのような(間)若者たちにとって(間)希望に満ちあふれた(間)日本を(間)国民の皆様と共に(間)つくり上げていきたい(間)と思っています(間)」(首相官邸HPより)

 聞き手は、そのたびに、これまで話したフレーズについて、内容についての賛否はいずれであったとしても、「確かにそうだな」と思ったり、「それは違うのではないか」と感じたりする間を与えられて、理解が加速する。また、主語で間がつくられた場合には、「次に何を話すのかな」「述語は何かな」というように、次の話への期待をもたせる効果がある。

Recommend

Biz Plus

Ranking

アクセスランキング