ボルボの「V60クロスカントリー」は、ミッドサイズ・ステーションワゴン「V60」をベースに開発されたクロスオーバーモデルだ。それは、ただ単純にV60の優美かつスポーティーなデザインにSUVテイストを融合させただけでなく、210ミリまでリフトアップした地上高や標準装備のAWDシステムを備えるなど、どんな悪路や予測困難な天候にも立ち向かうことのできる“超実用的”なプレミアム・クロスオーバーに仕上がっている。(文・写真 大竹信生/SankeiBiz編集部)
走りは力強くてスムーズ
「この独特の雰囲気、たまらなくボルボらしいよなあ…」
〈美しさ〉〈上品〉〈洗練〉〈精緻〉、そして〈安心感〉-。ドアを開けてシートに腰を下ろし、ハンドルやスイッチ類に指で触れた瞬間、体がこれらすべての感覚に包み込まれて気分が高まる。日本で2016年に投入された2代目「XC90」を皮切りに登場した“新世代ボルボ”の全モデルに共通する独特の空間。セダン、SUV、エステートなどタイプに関係なく、いったんドアを閉めれば外界の雑音は遮断され、車内に広がる「ボルボの世界」にグイっと引き込まれるのだ。
ダイヤモンドパターンを施したジュエリーのようなスイッチを回してエンジンを始動する。外から見るとプレミアムカーらしい重厚さがあり、サイズ的にも全長4785ミリ、全幅1895ミリと立派な体躯を誇るが、アクセルを踏むと1830キロ(試乗車はサンルーフ付きのため20キロ増)の車重はそれほど感じさせない。254PS〈187kW〉、350Nm〈35.7kgm〉を捻りだす2リッター直4ターボ+8速ATのパワートレインは力強くてスムーズに加速する。ドライブモードを「ダイナミック」に設定するとエンジン、トランスミッション、ステアリングに加えてブレーキまでクイックレスポンスになるが、スポーティーに仕上げたV60に対してクロスカントリーの味付けは全体的にまろやかだ。前後のサスペンションは大型モデルV90クロスカントリーの足回りを支える主要パーツをそのまま移植していることもあり、よりライトなV60ならいかなる状況でも余裕たっぷりといったところだろう。ちなみにドライブモードは中央の大型モニターを見ながら操作する必要があり、運転中のモード切り替えは避けるのがベター。操作ダイヤルは横に細長くて小さいため回しづらく、選択時にプッシュする瞬間にダイヤルがクルっと回ってずれてしまうなど「回す」「押す」の動作がぎこちない。