今回試乗したのはBMWの小型車ブランド「ミニ」の3ドア・クーパーモデルだ。昨年のマイナーチェンジで採用された7速ダブル・クラッチ・トランスミッション(DCT)搭載車に乗り込み、代名詞であるキビキビとした「ゴーカート・フィーリング」を味わってきた。(文・写真 大竹信生/SankeiBiz編集部)
鮮やかなオレンジ・メタリックに噴かれたコンパクトボディと、ボンネット上をビシッと走る2本の太いブラックライン。つぶらなヘッドランプがこちらをジーっと見ている。仕事で様々なタイプのクルマに乗ってきたが、ドアを開ける前から心が躍るようなことは、特別にラグジュアリーかハイパフォーマンスなモデル(例えば過去に試乗したロールス・ロイスやレクサスRCFのレーシングカー)を除けばそう滅多にない。ミニはそういう気分にさせてくれるクルマだ。それほど、地下駐車場でBMWらと一緒に並ぶミニはとてつもなく強い存在感を放っていたのだ。
自然と笑顔になる魅力
シートに収まり、トグルスイッチ型のお洒落なスタートボタンを押して発進すると、多くの人がその走りに「あれっ?」と驚かされることだろう。アクセルペダルを踏んだ時やステアリングを切った時、足回りの味付けなど、「ブロロロッ」と走り出した瞬間から想像以上の「硬さ」や「重さ」といった感覚が手足に伝わってくる。シートだって相当にコシが強い。全体的にハードでスポーティーな設計なのだ。
特にハンドルにかかる反力の強さは、カローラ・スポーツとリーフNISMOを運転したすぐ後だったこともあり、余計に大きな驚きだった。しかしそのような感覚は10分も走れば自然と馴染んでしまうから不思議だ。ひとたびクルマの性格をつかんで “ぎこちなさ”が消えると、変な自信が生まれてついつい調子に乗ってしまう。「操ってやるぜ!」と鼻息が荒くなり、一気にヤル気スイッチが入る。そして、自然と笑顔になってしまうのだ。
1.5リッターの3気筒ガソリンエンジンは最高出力100kW/136PSを発生する。走り出しは力強く、街中を俊敏にブイブイと駆け回る。硬めに設計されたサスペンション、短いオーバーハング、ワイド・トレッドも相まって、非常にシャープな回頭性を見せつける。DCTによる変速は滑らかで、市街地や屈曲路ではまさにゴーカートのような軽快なフットワークを楽しめる。乗り心地の面ではノイズやバンプの入力が絶えないが、これも“ゴーカート・ライク”なミニの立派な個性だ。