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【リニア乗車体験記】「ゴォー」と低く響く時速500キロ 金属探知機による手荷物検査は「まるで旅客機」

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【リニア乗車体験記】「ゴォー」と低く響く時速500キロ 金属探知機による手荷物検査は「まるで旅客機」

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JR東海が山梨リニア実験線で体験乗車を報道公開した=22日午後、山梨リニア実験センター(鴨川一也撮影)  JR東海は22日、総延長42・8キロの山梨リニア実験線(山梨県上野原市-笛吹市)で、7両編成の最新車両「L0(エルゼロ)系」に報道陣を乗せ、試乗会を開いた。11~12月に一般向けのリニア体験乗車を行うのに先立つイベントで、記者は一足先に「時速500キロの世界」を体感した。

QRコードを改札機にかざす

 この日はまず、同社の山梨実験センター(山梨県都留市)内に新たに設置された発券機や改札機などの設備が初めて披露された。

 一般向け体験乗車の参加者は、金属探知機のゲートをくぐって手荷物検査を受けた後、発券機を操作してチケットを受け取る。「リニア搭乗券」と書かれたチケットは旅客機のチケットとほぼ同じつくりで、不正防止のために乗客の氏名を記載している。そして、チケットに印刷されたQRコードを改札機にかざすとチェックインが完了する。

 乗車手続きは、高速鉄道に乗るというよりも、「旅客機に搭乗する」という印象を強く受けた。ただ、JR東海の遠藤泰和・山梨実験センター所長は「実験線での体験乗車を意識したものであり、実際の営業運転での設備は今後検討する」などと含みを持たせる。

 通路を歩き、「乗降場」と呼ばれるホームに行く。頑丈な造りのタラップの先に、白をベースに青のラインが入ったL0系の車体がわずかにのぞいた。空港で搭乗橋を渡って旅客機に乗り込むときと同じ感じだ。

タイヤ走行から浮上走行に

 だが車内に入ると、一転して東海道新幹線に似た感覚を覚えた。白を基調とした車内には、青みがかった座席が左右2列ずつ並ぶ。シートベルトはない。走行時速や車両先端についたカメラが撮影した映像を見られるモニターもあった。

 車両が動き出し、時速160キロ前後になったところで、タイヤでの走行から浮上走行に移った。「耳を澄ませていただきますと、音が変化するのに気づいていただけます」と案内が流れた。確かに音の感じは違ったが、たいした衝撃も受けずスムーズそのものだ。

 いったん東の方向に向かい、そこから反転して「時速500キロの旅」が始まった。時速300キロを過ぎたあたりからぐんぐんと加速し、走り始めて3分ほどたったところで、車内のモニターが「500km/h」と表示。報道陣がカメラのシャッターを切る音が一斉に響いた。車両はしばらく時速500キロ前後を保ち、甲斐の山並みを一気に駆け抜けた。実験線の大半を占めるトンネルに一定間隔で設置された照明はまるで一筋の光のように見えた。

引き続き技術をブラッシュアップ

 全体として体に負担は感じなかった。ただ、500キロ走行のときに、「ゴーッ」と低く響く雑音や車内での揺れは、現在走っている東海道新幹線に比べるとやや大きく感じた。また、実験線は標高の高低差が約400メートルあり、気圧差が原因か、旅客機の離着陸時に感じるような耳がツーンとした状態に何度かなった。

 この日の体験乗車は約25分。実験線を往復する形で時速500キロを2度体感した。車両が減速し、浮上走行からタイヤ走行に戻る際には旅客機が着陸するような軽い衝撃を感じたが、停車はとても静かだった。

 山梨実験センターの遠藤所長は報道陣に「引き続き技術のブラッシュアップをしていく。東海道新幹線も(開業から)50年かけてここまで進歩してきた。技術に磨きをかけ、乗り心地を向上させ、コストを低減させていく」と強調する。日本の未来を大きく変えるはずのリニアは、13年後の2027年に予定される開業まで試験走行を重ね、進歩を続ける。

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