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【金曜討論】CAのミニスカ制服 久我尚子氏「話題作りに一定の効果」 宝地戸百合子氏「保安業務に支障が出る」

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【金曜討論】CAのミニスカ制服 久我尚子氏「話題作りに一定の効果」 宝地戸百合子氏「保安業務に支障が出る」

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久我尚子氏  中堅航空会社のスカイマークが5月末に新型機「A330」を導入するのに合わせて、同機の客室乗務員(CA)に着用させる新しい制服が波紋を広げている。膝上約15センチの青いミニのワンピースで、業務上支障が出る可能性が指摘され、国土交通省、厚生労働省も関心を寄せている。このミニスカ制服の是非について、ニッセイ基礎研究所の久我尚子准主任研究員と、CAの労働組合「客室乗務員連絡会」事務局の宝地戸百合子氏に見解を聞いた。(溝上健良)

 ≪久我尚子氏≫

  --あの制服をどう評価するか

 「本来は、日本の航空会社として初めて導入した新型機A330のゆったりとした『グリーンシート』の宣伝だったはずだが、スカートの長さだけに注目が集まってしまった。乗務員の業務のことを考えなければ、かわいらしくて元気さ、若さを訴求できていると感じる。緑のシートと制服の青、スカーフの黄色のコントラストがハッキリしていてきれいだな、という印象はある」

 --集客効果は

 「格安航空(LCC)との競争が激化する中で注目を集め、A330機を導入する路線の予約は好調と報道されており、集客という点では一定の成功を収めたといえる。ただ、日本航空の高級シート『クラスJ』と同等のシートをほぼ半額で提供する高品質・低価格という新しい試みをアピールするのが本来の目的だったはずなのに、ミニスカの話題が先行してむしろ悪評につながってしまったことは残念」

 --スカートの長さについて

 「何らかの危機的状況があった場合、短すぎるのではないかとの批判が多数あるのは事実。国交相や厚労相の『適切に保安業務を行う必要がある』といった指摘は重く、何らかの対応策が必要だろう。機内では安全が第一であり、例えば、お客さまを出迎える際だけこの制服を着用し、機内業務の際には別の制服に着替えてもいいと思う。保安上、やはり問題はありそうだ。きちんと顧客の不安感を払拭し、シートの良さを訴求していくという航空会社としての本来業務のあり方が問われている」

 --「セクハラを誘発する」「女性の商品化だ」との指摘もある

 「満員電車の中でもミニスカートの人を触るのかといえば、必ずしもそうではないはず。この制服だからセクハラにつながるというのは、少し行き過ぎた批判のように感じる面もある。集客を目的に個性的な制服を導入することはファミリーレストランなどでも行われており、それらがすべて否定されかねない。ただスカイマークの場合、入社時からではなく社員が働いているところに後から『この制服を着て』という点が他社とは異なり、問題ではある。期間限定で希望者のみ着用ということだが、実際は着ざるをえないという社内事情もあるかもしれない」

 --かつて、日本航空もミニスカートの制服を採用していた

 「以前にもまして女性の権利が重視されるようになってきており、過去に問題にならなかったから今も大丈夫だ、というのは見識に欠ける。今回の制服については、話題作りでは一定の効果があったはずだが、ミニスカートばかりが注目されてしまいもったいない気がする」

                   ◇

 ≪宝地戸百合子氏≫

 --今回の制服をどう評価する

 「客室乗務員の制服としては肝心の保安業務を全うできるものではない。現在も機内では、盗撮をしたり乗務員に触れてくるお客さまがいるが、この制服ではそうした機内の迷惑行為を誘発しかねない。スカイマークの機内では荷物の上げ下ろしはお客さまにやっていただいているようだが、例えばお年寄りの方がいた場合には乗務員が手伝うことになるだろう。また荷物入れのふたが閉まっているかの確認が必要で背伸びするような動きを伴うときに、ワンピースなので服全体が持ち上がってしまい、下着が見えかねない」

 --職務上、問題があると

 「緊急時にいかにお客さまを安全に避難させるかが第一で、その際に対応できる制服でなければならない。機内で心臓マッサージをすることもありうるが、あのスカートの短さでは問題。離着陸時には乗務員は客席側を向いて座る形になるが、お客さまも目のやり場に困るのが今から想像できる」

 --海外の航空会社の例は

 「あれほど短いスカートは近年、私の知る限りでは例がない。肌をあらわにしていると緊急時、脱出用すべり台での降下時にやけどをしかねないので極力、太ももは覆っているはずだ。スカイマークの制服も、スカートが膝まであれば問題ないだろう。普通の洋服としてみれば、色も含めてすてきだと思うが、保安業務ということを考えたときにスカートの短さが問題だ」

 --日本航空は昭和45年のB747導入時にミニスカートの制服を採用したことがある

 「私が入社する直前までその制服だったので試着した経験もあるが、スカイマーク社の制服よりはスカートが長かった。当時は会社も乗務員も、今ほど安全への意識が徹底されていなかった時代。以前、日本航空では着物で乗務するサービスもあったが、それでは保安任務ができないと、離着陸時の着物サービスはなくなった経緯がある。仮に今、昔のような制服が再度提案されたとしたら、私たちは反対する。なおミニスカート制服時代には同色のストッキング、ガードルが支給されていたが、それでも先輩に聞くと下着が見えないか気になっていたという。以前に日本航空もやっていたから大丈夫だ、との見解は的外れだと思う」

 --スカイマークでは制服を着用するのは希望者のみとしている

 「当組合にはスカイマーク社員はいないので伝聞になるが、『あの制服を着たくない』との声が漏れ聞こえてきている。本音としてはそうであってもなかなか着用を断れないだろう。実際あの制服では仕事がやりにくいはず。仮にあれがOKであれば他社でも類似の制服が導入されかねず、これは問題と考え、組合として問題提起した」

                   ◇

【プロフィル】久我尚子

 くが・なおこ 昭和51年、埼玉県生まれ。38歳。早大大学院理工学研究科修士課程修了。NTTドコモを経て現職。内閣府統計委員会専門委員。若年層のライフスタイルや消費者行動などを研究している。

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【プロフィル】宝地戸百合子

 ほうちど・ゆりこ 昭和30年、神奈川県生まれ。58歳。早稲田大第一文学部卒。52年に日本航空に入り、国際線を中心に33年間、CAとして乗務した。現在は客室乗務員連絡会(組合員約千人)の事務局員。

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