--2013年を振り返って
「13年は今中期経営計画の仕上げの年ということで、設備投資や成長拡大投資をどんどん決めて実行した。ただ、情報通信産業の構造変化により、顧客や主要拠点が国内家電メーカーから韓国に移り、さらに現在は中国に移ってしまった。材料の供給量ではシェアを上げたが、(価格競争に巻き込まれ)価格が大幅に落ち込み利益面でマイナスとなった。一方、繊維は高機能素材を中心に好調に推移し、素材の落ち込み分をカバーした」
--14年4月からは、新しい中期経営計画がスタートする。力を入れる分野は
「重要なのはコスト削減。規模的には(現在の中計の約1200億円を上回る)2000億円の削減を目指す。素材の加工工程だけでなく、製品そのものを変えないと、コスト削減は実現できない。同じ製品で製造コストを削減するのには限界がある。付加価値品に変えていき、新たな革新的な素材に変えていく中でコスト削減を進める」
--今後成長が期待される事業分野は
「環境問題を解決する素材分野はますます拡大する。また、健康関連の『ライフイノベーション』分野が非常に重要になるとみており、医療衣類や機器向けの素材を積極的に伸ばしていく。繊維分野では、さらに高機能なものを原材料から提供できるよう開発を進める。機能性の高い素材ならば世界共通で受け入れられる。縫製品まで含めた最終製品で機能を発揮しようと思うなら、やはり糸綿からしっかりと作っていく必要がある」
--積極的に投資している炭素繊維事業の方針は
「15年までに生産能力を現在より3割増やし2万7000トンに拡大する計画があるが、今後は炭素繊維の加工事業を大きく伸ばしたい。だが、主力の航空機向けだけに頼っていたら量は伸びない。後加工が増えると用途展開も広げられる。昨年にレーシングカー用部品を生産する童夢カーボンマジックを買収したような方法や、中小企業への資本参加など色々なやり方で検討する」
--今後の増産計画は
「新型旅客機のボーイング787など主力の航空機向けの需要が増える米国の伸びが大きい。コスト競争力も強くなっており、必然的に米国の生産拠点のウエートは大きくなる。次期中計では米国だけで1000億円程度の投資が必要となるだろう」(西村利也)
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【プロフィル】日覚昭広
にっかく・あきひろ 東大大学院修了。1973年東レ入社。2004年常務、06年専務、07年副社長、10年6月から現職。兵庫県出身。