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カネボウと花王、15年から新卒一括採用 「一体運営と一体化は全く違った」
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花王の沢田道隆社長は17日、フジサンケイビジネスアイのインタビューに応じ、子会社のカネボウ化粧品がこれまで独自に実施してきた新卒採用について、2015年春入社から一部を除いて花王グループとして一本化する方針を明らかにした。15年春入社は生産・研究部門を一括採用の対象とし、販売部門の採用をその後に一本化する。
医薬部外品の有効成分「ロドデノール」を配合した美白化粧品で、肌がまだらに白くなる白斑症状の被害者は9月29日現在で1万4000人近くに達した。この問題を受け、花王はカネボウの生産・研究部門を14年1月から花王に順次統合し、販売部門も将来的に統合する方針を既に打ち出しているが、採用の一本化も図ることでカネボウとの一体化を強力に進める考えだ。
沢田社長は「来春の採用はほとんど終わっており、その次の採用からグループ全体で考えていく」と説明。商品企画などを行うマーケティング部門など一部の採用はカネボウ枠として残すが、生産・研究部門で一括採用に移行した後、販売部門も一本化する意向を示した。
また、カネボウとの経営一体化を進めることで「安全・安心について非常に高いレベルを維持する」と説明。意識の共有化を図ることで、白斑問題で失墜したカネボウブランドの信頼の回復に努める考えを強調した。
ただ、カネボウブランドについては「カネボウらしさがなければ買収した意味が全くない」と指摘。カネボウの対面販売がブランドの構築に寄与してきたとした上で「どのような形で『らしさ』を出せるかを考えなくてはいけない」とした。
沢田社長は、従来の花王とカネボウの関係について「違う家を行き来していたようなもので、その上で強みの相互活用を考えていた」と説明。だが「一体(的な)運営と一体化は全く違った」と指摘し、白斑問題がなくても生産・研究を一体化する方針だったと明らかにした。
花王は、化粧品では高い知名度や実績を持つカネボウのブランドに価値を見いだし、傘下に収めた経緯があり、「自主性の尊重」といった大義名分の下、カネボウへの遠慮が花王側にあったことも否めない。
メーカーの生命線ともいえる安全管理面の破綻を露呈したことで、遠慮を拭い去る形になったのは皮肉ともいえるが、カネボウとの採用の一括化は、これ以上は後に引けない状況を示す花王の決意の表れともいえそうだ。
「花王グループの資産の最大化と安全・安心の保証体制を強化するためだ。買収から約7年が経過したものの、買収当時に期待したほどのシナジーは発揮できていない。より高いレベルで花王の基本理念を共有化する必要があると判断した」
「それ以前から統合は考えていた。ただ、今回の問題で『会社組織や意識、風土の問題が大きい』とした第三者委員会の指摘は、非常に重く受け止めている。親会社として深く(カネボウの経営に)関与していくつもりだ」
「『カネボウらしさ』を生かそうと考えたが、期待するほどの成果を得られていない。研究と生産、その後に販売部門を一体化するが、花王色に染まらず『カネボウらしさ』を維持する一体化を考える。カネボウが持つパリ研究所や中国の生産拠点なども花王と一体化し、グローバルで理念の共有化を図る」
「被害の全体像は見えてきたが、被害者への早期回復の対応や原因究明は進めなくてはならない。補償対応も考えれば3~5年はかかる。ただ一方でカネボウ製品を待ち望んでいる顧客もいる。状況をみながら、新生カネボウとして提案したいと思っている」(兼松康、西村利也)