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アップル、競争激化で路線転換 iPhone複数機種で市場深掘り

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アップル、競争激化で路線転換 iPhone複数機種で市場深掘り

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新型スマートフォン「iPhone5s」(アップル提供)  【ワシントン=柿内公輔】米アップルがまた“封印”を解いた。タブレット型端末に続き、スマートフォン(高機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)」も廉価版を投入。ライバルとのシェア争いが激化し、劣勢の新興国でも巻き返しを図るためだが、路線転換の成否について市場の見方は割れている。

 アイフォーンの初代が登場してから6年。今もアップルの利益の3分の2を稼ぎ出す大黒柱だが、変わったのは取り巻く環境だ。

 米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載した韓国のサムスン電子の端末など他社が競争力をつけた。

 米調査会社IDCによると、2013年4~6月期のスマホ世界シェアはサムスンが30.4%で、アップルの13.1%を大きく引き離す。アップルが低価格モデルの投入をしりごみしている間に、成長著しい中国やインドなど新興国市場でも出遅れた。

 アップルが投入する廉価版のアイフォーンについて、米市場調査会社フォレスター・リサーチのチャールズ・ゴルビン氏は「新興国を中心に伸び悩んできたアップルの成長を押し上げる可能性がある」と予測する。

 アップルはタブレットでもグーグルなどの低価格端末に対抗するため、「iPad(アイパッド)」の小型版を昨年投入した。

 成熟する先進国でも、NTTドコモと今回提携するなど、価格に敏感な消費者やスマホ初心者の需要を取り込み、市場を深掘りしたい考えだ。アップルのクック最高経営責任者(CEO)は「さらに多くの人に届けたい」と日本での販路拡大に期待を示す。

 ただ、「発表に驚きが乏しかった」(アナリスト)との声もあり、市場の反応は鈍く、10日のアップル株は前日比2・28%安とさえなかった。廉価版の投入が利益率とブランドの低下を招くとの懸念も根強く、アップルの戦略は後手に回っているとの指摘もある。

 新方針を成功につなげるには、交渉中とされる中国企業など新興国での提携戦略や、スマホ依存からの脱却へ新製品の開発を加速する必要がありそうだ。

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