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富士通「秋彩」拡大で農業支援 ICT活用プロジェクトに83件

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富士通「秋彩」拡大で農業支援 ICT活用プロジェクトに83件

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ICTで温度管理を徹底し、仙寿菜を栽培する「秋彩」農園=18日、静岡県沼津市  富士通は18日、クラウドなどのICT(情報通信技術)を活用した農業支援プロジェクト「Akisai(秋彩)」の利用件数が、1年間で83件(団体数は約1500)にのぼったことを明らかにした。安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」は、農林水産業を成長産業に育成する方針を打ち出しており、「秋彩」拡大を通じて日本の農業の国際競争力向上を後押しする。

 富士通沼津工場(静岡県沼津市)の敷地内には2棟のビニールハウスがある。実際にICTを活用し、野菜などの栽培データや検証結果を「秋彩」のサービス開発に生かす取り組みが行われている。

 「ビニールハウスの天窓の開閉など施設の制御はクラウド経由で行われており、室内温度の急激な変化などトラブルがあった場合はスマートフォン(高機能携帯電話)に連絡が入る」。栽培担当者は「秋彩」システムの特徴をこう表現する。

 現在、ハウスで栽培しているのは、健康野菜として注目が集まっている仙寿菜だ。生育環境が限定され、露地栽培は難しいとされてきたが、「秋彩」ではハウス内で水耕栽培に取り組み、通年栽培の実現を目指している。

 「ハウスの室温は30~40度、水温は23~24度と温度管理が難しい。ICTの実力が試される」と担当者は話す。

 「秋彩」は約1年前にプロジェクトがスタートし、全国10カ所で実証実験を実施した。システムを導入した農家の中には、「キャベツの収量が30%アップした」(阪井洋之ソーシャルクラウドサービス統括部長)ケースもあるという。

 作物ごとの利益率を基に作付ポートフォリオを作成したり、圃(ほ)場ごとの品質・生産性の比較による課題を把握したりする一方、作業のマニュアル化で人材育成に貢献するなど、農家の経営・生産の「見える化」を実現し、収益拡大の効果が表れている。

 現在は、食品加工や卸、小売り、外食などの産業もプロジェクトに加わっており、生産から販売までをICTを使って結ぶ「食のバリューチェーン」構築にも取り組む方針だ。

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