ニュースカテゴリ:企業自動車
“スバリスト”の期待に応える性能実現 富士重「スバルXVハイブリッド」
更新
アクセルペダルを踏んだ場合の加速度 富士重工業は今月下旬、同社初のハイブリッド車(HV)「スバルXVハイブリッド」を発売する。
人気のスポーツ用多目的車(SUV)の中で燃費性能がトップとなるガソリン1リットル当たり20.0キロを達成。ハイブリッド機能と専用エンジンの効率改善で、ガソリン車に比べ約3割燃費が向上した。加えて、電動モーターがアシストする形で加速性能を高める新しいHVの形を提案。走りを重視する熱烈なスバルファン“スバリスト”の期待にも応えた。
「走りと燃費はトレードオフだが、今回は両方とも良くした」
富士重の吉永泰之社長はこう力を込める。一般的なHVは、エンジンパワーや排気量を落とし、その不足分を電動モーターが補うことで燃費性能を上げる仕組みだが、「当社のHVはそのままの排気量。走行性能が損なわれないのが特徴」(広報部)という。
実際、HV向けにエンジンを一部改良したものの、ガソリンエンジン車で使用していた排気量2000ccの水平対向4気筒エンジン「ボクサーエンジン」とリニアトロニックCVT(無段変速機)を採用。
モーターは、このCVTに組み込む形で設置できるよう工夫したことで、「ガソリン車で培った低重心の構造をそのまま使えることとなり、俊敏なハンドリングを実現することができた」と竹内明英商品企画本部プロジェクトゼネラルマネージャーは胸を張る。
さらに、今回のスバルのハイブリッドシステムの面白さは「走りの“味”にも使った」(吉永社長)という点だ。モーターがエンジンの出力を低回転から全域でアシストするのが特徴で、ガソリン車よりもなめらかに加速する。例えば、時速40キロ走行で、アクセルペダルをさらに4分の1程度踏み込んだ場合、0.5秒後には従来車より約4割も加速度が高まるという。
吉永社長は「ガソリン車よりも、さらに走りが良くなる。ターボ(過給器)の変わりにモーターを使った感覚。『走りが楽しいでしょ』という提案だ」と説明する。
こうした技術に加え、搭載が有力視される渋滞時にアクセルとブレーキを自動制御して前の車に追突しないように追従する機能「クルーズコントロール」にもハイブリッドの利点が生かされた。
この機能を使った走行は、走りの楽しさよりも、燃費性能により力点が置かれる。通常の走行時は、ガソリンエンジン約7割、電動モーター約3割の使用比率が、ガソリン約6割に対し、電動モーターが約4割となる仕組みで、「約1割の実用燃費アップにつながる」(竹内プロジェクトゼネラルマネージャー)という。
2012年の国内新車販売(軽自動車含む)に占めるHV比率が約18%(11年は11.6%)と高まるなか、同社は「燃費を向上させる電動化時代において、スバルが他社と違った形で取り組む姿勢を示した」(吉永社長)としている。
今年は、トヨタ自動車が「カローラ」、ホンダが「アコード」「フィット」といった主力車種で相次ぎHVを投入する計画だ。このため、国内市場でのHV比率はさらに高まるとみられ、燃費競争が熾烈(しれつ)になることは間違いない。
同時に、今後は、単なるHVではなく、個性豊かなHVを投入することが勝ち残りの条件となりそうだ。(飯田耕司)