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ドコモが開けた「パンドラの箱」 ソーシャルゲーム事業で反撃なるか

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ドコモが開けた「パンドラの箱」 ソーシャルゲーム事業で反撃なるか

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 通信料収入の長期低落傾向に危機感を強めるNTTドコモが、年内をめどにインターネットのソーシャル(交流)ゲーム事業に参入する。ドコモは2012年3月期に4000億円だった通信料収入以外の新規事業の売上高を4年後までに2.5倍にする計画を立て、牽引(けんいん)役に据えるゲームへの意気込みは強い。

 さらに埋没感もあるスマートフォン(高機能携帯電話)向けコンテンツ(情報の内容)事業の展開も、ソーシャルゲームの導入で活性化したい考えだ。

 スマホ顧客引き込み

 「(コンテンツを配信する)直営の『dマーケット』ではビデオ、音楽、電子書籍を売り、アニメも始めた。次は何かと言えば、ゲームだ」。就任直後の7月、加藤薫社長はこう述べ、11年11月に「ドコモマーケット」から名称を変え、コンテンツの幅を広げたdマーケットの一層の拡充に意欲をみせた。

 スマホ向けのコンテンツ配信事業では、iPhone(アイフォーン)で市場を切り開いた米アップルと、携帯端末向け基本ソフト(OS)の「アンドロイド」を展開する米グーグルの2強が世界で競う。

 その一方、国内ではKDDIが複数のアプリを定額で提供するサービス「auスマートパス」で健闘しており、ドコモの影は薄い。

 ドコモは11日、スマホの冬モデル発表会でソーシャルゲームへの参入を正式に表明し、詳細を公表する。基本的には、セガやバンダイナムコなどゲーム大手十数社がdマーケットを通じてゲームを無料で提供。ゲーム内で使うアイテム(道具)の販売を収益の柱に据え、ゲーム会社とドコモが一定割合で分け合う仕組みとなる見込みだ。

 ドコモはゲーム会社からゲームの配信手数料も得るが、携帯電話向けの情報関連サービス「iモード」並みに手数料を低く抑え、ソーシャルゲーム大手のDeNA(ディー・エヌ・エー)やグリーに対抗。ゲーム会社の囲い込みを図る。

 さらに約6000万人の顧客基盤やブランド力を生かし、ソーシャルゲームを利用したことがないスマホのユーザーを引き込む効果も期待できる。SMBC日興証券の前田栄二シニアアナリストは「年間で300億円から400億円の売上高が見込める」と話す。

 「安全」運営で差別化

 ドコモの新規参入は、本業の伸び悩みが背景にある。電話番号を変えずに他の通信会社のサービスに移行できる「番号持ち運び制度(MNP)」の利用数では、契約者の転出超過が9月まで44カ月も続き、通信料収入の減少傾向が常態化している。

 ただ、ソーシャルゲームは市場が急拡大する一方、利用者の射幸心をあおる課金手段「コンプリートガチャ」が社会問題化。業界は自主規制に乗り出したものの、利用者同士のトラブルや犯罪行為を誘発しかねない危うさを抱えたままだ。

 ゲーム関連の問い合わせを全国約3000店のドコモショップで受け付けるなど、ドコモは万全の態勢を敷く。UBS証券株式調査部の梶本浩平アナリストは「『安全・安心』の運営で差別化を図る考えだ」と指摘する。加藤社長はdマーケットでデジタルコンテンツだけでなく出資企業が扱う有機野菜や健康器具なども売り、楽天のような総合通販サイトに育てたい考えだ。

 NTTグループにはかつて、電話回線を使った情報提供サービス「ダイヤルQ2」が犯罪の温床となるなど、社会問題化した過去がある。ソーシャルゲームという「パンドラの箱」を開けた後のかじ取りも、決して容易ではない。(大坪玲央)

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