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【クルマ人】日産「ノート」内燃機関の限界に挑む 強敵「フィット」とも戦える仕上がり

2012.9.16 07:00更新

日産自動車「ノート」と水口美絵チーフ・プロダクト・スペシャリスト

 日産自動車が発売した小型車「ノート」。欧州で主流となっている小型エンジンと、ターボチャージャーやスーパーチャージャーといった過給器を組み合わせて、低燃費ときびきびとした走りを両立させる「ダウンサイジング過給」技術を国内で初めて本格的に採用した。

 これによりクラストップクラスの低燃費を実現し、日産の最量販車種に育成する戦略車だ。国内メーカーでも前例のない女性開発責任者となった水口美絵・商品企画室チーフ・プロダクト・スペシャリストに、商品コンセプトを聞いた。

 --想定するユーザー層は

 「実は幅広いユーザーを狙って、特に特定の年代といった絞り込みはしなかった。ありとあらゆる世代に使ってもらうことをコンセプトにした。ただ、ライフスタイルとして、毎日クルマに乗って、それも単に移動の手段だけとするのではなく、生活の質を高めていきたいと考える人たちに乗ってもらいたい。今回、(上位車種の)『ティーダ』とノートを統合するが、先代ノートでも、ティーダでもとれていなかった層を獲得していきたい」

 --そのための改良点は

 「ティーダは上級セダンからの乗り換えを意識していたため、セダン風の高級志向だった。ノートは1500ccエンジンを積んで、走りはしっかりしていたが、価格は高めだった。そのため、『ビギニングファミリー』をとれず、日産では「セレナ」などのミニバンでこの層をとりにいっていた。しかし、競合他社はこういった層をコンパクトカーでしっかりとっていた。新型ノートでは、その点を強く意識している」

 --ホンダの小型車「フィット」との競合が予想される

 「確かにフィットはいろんな年代にまんべんなく受け入れられており、参考にした。勉強すればするほど、ちゃんとできたいいクルマだとわかった。これを意識して作り込んだし、価格面でも、エントリーグレードでは、フィットと戦えるような設定にした」

 --今回は、クラストップの低燃費が売りだ

 「先代ノートは(ガソリン1リットルで)18キロ(走行)相当だったが、新型は25・2キロで、4割の性能向上だ。燃費はもはや時代のリクエストだ。これを避けて通ることはできない。それ上で、パワーがある。デザイン面でもこの特長がはっきりするような外観になるよう意識した。先代はスタティックなデザインで、年配の方には好評だったが、今回は乗っている人が快活にみえるように、はつらつとしたデザインとした。『スカッシュライン』というサイドの新デザインも見てほしい」

 --国内で本格的なダウンサイジング過給採用だ

 「内燃機関の物理的な限界にチャレンジするとして、開発メンバーが取り組んでくれた。(低燃費化できる)ミラーサイクルを採用し、排気量も小さくして、燃費性能を上げた。その分トルクが細くなって走りに影響するが、それをスーパーチャージャーで補う。フォルクスワーゲンはターボが中心だが、CVT(無段変速機)とのマッチングがいいため、スーパーチャージャーに決めた。日産のCVTは競争力が高く、その特長も燃費改善に役立っている」

 --企画段階からダウンサイジング過給の採用を決めていたのか

 「燃費と走りの両立を果たすには、HV(ハイブリッド車)ということも検討には上がったが、価格が高くなってしまう。ノートのコンセプトを考えると、はじめからダウンサイジングエンジンの搭載でいくと決め、ぶれずにやってきた」

 --女性の開発者であることを意識したことは

 「自分自身が女性であることを強く意識しているということはないと思う。それよりも毎日使ううえでの便利さについてはこだわっていた。『インテリジェントキー』は必須だし、それと同じように、コンパクト車では初めてとなる『アラウンドビューモニター』も使えば便利さを実感してもらえると思う。車庫入れなどに不安を持っている人は多く、これがあれば、クルマを使うことの抵抗は少なくなる。そういう意味では、女性視点なのかもしれない」

 「明確に女性視点を取り入れたのは、後部ドアの開口。ほぼ90度と広く開く。チャイルドシートに子どもを乗せたり、大きな荷物の出し入れには便利だ。開口も2段階になるようにして、狭い駐車場で、ドアをいきなり全開にして、隣のクルマにぶつかるようなことはないといった配慮もある」

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