緊急事態宣言1年 関西製造業、大企業の業績改善も中小は恩恵及ばず

2021.4.8 06:34

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う初の緊急事態宣言が発令されてから7日で1年が経過した。関西の製造業は大企業を中心に、関係の深い中国経済の回復やテレワーク拡大を受け業績回復が進んだが、中小企業に恩恵は及んでおらず休業や廃業を選ぶケースも多い。中小製造業は、普及が見込まれる電気自動車(EV)のイノベーション(技術革新)などを、自らの成長に結びつけることが求められる。(山本考志)

 東京商工リサーチが7日発表した関西2府4県の令和2年度の倒産件数は政府による資金供給があって1924件に抑えられ、過去30年間で最少となった。製造業も213件で、リーマン・ショック直後の平成21年度(631件)以降、最少だった。

 ただ、倒産のように借金返済ができないといった事情がなくても事業をたたむ休廃業や解散の令和2年度の件数は関西全体で6744件に上り、調査開始の平成12年度以降で最多に。このうち製造業も841件で過去最多だった。

 東京商工リサーチは、新型コロナ禍の収束が見通せず、中小企業を中心に金銭的な事情がなくても休廃業や解散をするケースが増えているとしている。

 一方、関西の製造業では昨年度、大企業中心に業績改善が目立った。昨年4月以降、国・地域別の輸出先でトップの中国から感染が広がり生産や物流の停止が続いたが、その後急速に回復。テレワークの拡大や第5世代(5G)移動通信システムの普及で、パソコンやスマートフォンの需要も高まった。

 電子部品大手の村田製作所は3年3月期の通期業績予想で、本業のもうけを示す営業利益が約2900億円の過去最高益を見込む。パナソニックやシャープも巣ごもり需要や国内の1人当たり10万円の特別定額給付金などを受け、白物家電などの販売が好調に推移している。

 大企業と中小企業の差について、りそな総合研究所の荒木秀之主席研究員は「中小企業は大企業に比べ海外需要の恩恵の波及に時間差がある。価格交渉力も弱く、経済活動の再開に伴う原料価格の高騰で利益が圧迫されている」とする。

 中小製造業の課題はイノベーションの動きなどをどこまで取り込めるかだ。たとえば、各国が脱炭素化社会の実現に動く中、普及が見込まれる電気自動車(EV)はガソリン車に比べて部品数が減るとされる。

 自動車部品メーカーを中心に約200社が加盟する「関西ねじ協同組合」の北井啓之理事長は「関西の中小企業はEVの電池周りの部品を作るといった対応が求められる」としている。

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