カナダ、EPA交渉の先行打診 総選挙控えTPP推進に消極的

2014.12.29 07:06

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉に参加するカナダが日本に対し、TPPよりも経済連携協定(EPA)交渉を先行するよう打診していたことが28日、分かった。カナダは来年の総選挙を控え、国内の反発を招きかねないTPP交渉の推進に消極的な姿勢を強めていることが背景にある。TPPの合意に向けた障害としてカナダが急浮上してきた形で交渉の“崩壊”懸念が一段と増している。

 通商筋によると、カナダはここにきて「TPP交渉は合意が難しいので先延ばしして、日本とカナダのEPA交渉を先にまとめたい」との意向を日本に伝えてきたという。日本はカナダと2012年11月からEPA交渉を続けているが、現時点で早期にまとまる見込みはなく、EPAよりもTPP交渉の合意を急ぎたい考えだ。

 カナダがTPP交渉を進めることに後ろ向きになっているのは国内事情と交渉の遅れが大きく影響している。

 カナダは来年10月に総選挙が予定されている。TPP交渉では米国などから乳製品や畜産関連市場の開放を求められており、選挙が近づくほど国内の関係業界を刺激する交渉を進めにくくなるという事情がある。

 TPP交渉は今年11月に中国・北京で開催された首脳・閣僚会合で、日本が合流した昨年に続いて年内の大筋合意が断念された。交渉の越年が確実になり、カナダはますます交渉の推進には慎重にならざるを得なくなっている。

 実際、カナダは参加国との2国間の関税協議などをほとんど進めていないのが現状で、日本の政府高官は「今、交渉の“問題児”となっているのはカナダ」と明かす。

 交渉はこれまで日本の重要農産品の関税をめぐる日米協議の未決着や知的財産など難航分野に関する米国と新興国の対立がブレーキとなっていた。さらに参加国で日米に次ぐ経済規模のカナダが停滞要因となれば、合意が一層難しくなるのは確実だ。

 日本政府内では「カナダが消極姿勢を続ければ、交渉からの『カナダ外し』を求める声が上がる可能性がある」との見方も浮上している。ただ、その場合、米国と対立するマレーシアなど新興国がカナダに続く交渉からの脱退に傾き、交渉が瓦解(がかい)する恐れも否めない。

 交渉の旗振り役である米国は来年夏以降、次期大統領選に向けた動きが本格化し、オバマ政権のレームダック(死に体)化が加速する。このため、交渉は来年5月が合意にこぎ着けられる期限との見方も強い。限られた時間で、交渉を主導する日米は慎重な対応を迫られそうだ。

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