2014.8.28 04:30
■実質賃金減に消費税増税が追い打ち
内閣府が8月13日に4~6月期の国内総生産(GDP)の速報値を発表し、衝撃が広がりました。実質GDPは前期比でマイナス6.8%(年率、以下同)で、東日本大震災時(6.9%減)に匹敵します。米経済紙「ウォールストリート・ジャーナル」社説(14日の電子版)は「日本経済は4~6月期に崖から突き落とされた」と断じました。
◆家計消費の冷え込みが最大の原因
戦後最大級のGDP落ち込みの主因は、家計消費の急速な冷え込みです。民間最終消費支出は、年率でマイナス18.7%と、比較できる統計のある過去20年間では最大の落ち込みです。前回の消費税増税時のマイナス13.3%(1997年4~6月期)をも大きく上回っています。
安倍政権は、増税前の駆け込み需要の反動に過ぎず「想定内」だと主張していますが、増税前の1~3月期の増加分(8.5%増)を差し引いても10%以上のマイナスです。単なる「反動減」では説明できません。
今回の民間最終消費支出の対前期比は、年率換算前でマイナス5.0%ですが、民間シンクタンクは、5月から6月ごろにはマイナス2.3~3.3%程度と予測していました。最近になって「駆け込みが想定外に大きかった」などと言ってマイナス3.6~4.6%に下方修正していましたが、速報値は下方修正された予測をさらに下回ったわけです。
これは、単なる駆け込み需要の「反動減」にとどまらない、深刻な消費の落ち込みがあったことを示すものに他なりません。
◆消費減少の土台に実質賃金の低下が
消費が「反動減」にとどまらない落ち込みとなった土台には、国民の実質所得が減っていることがあります。
18日に厚生労働省が発表した6月の毎月勤労統計(確報)によれば、実質賃金指数で現金給与総額が前年同月比でマイナス3.2%となり、12カ月連続で前年割れとなりました。円安の影響などによる物価上昇が続いていたところに、消費税増税による物価上昇が追い打ちをかけ、実質賃金は4月以降3%を超える大幅減少を続けています。まさに危機的な状況です。
前回、97年の消費税増税時にはその直前まで実質賃金は前年同月比でプラスが続いていました。そこに2%の増税が襲い、それ以降実質賃金はマイナスに転じたのです。今回は、実質賃金が一年近く低下を続けていたところに3%の増税をかぶせたのですから、その無謀さは明らかでした。
安倍首相は賃上げの成果を強調しますが、増えた月でも小数点以下の増加率で、物価上昇よりひとケタ小さい水準です。「経済の好循環」どころか、実質賃金低下の悪循環が起きているのです。
◆消費税増税中止と大幅賃上げを
政府は、「山高ければ、谷深し」と4~6月期に大きく落ち込んだ景気が、7~9月期には「谷深ければ、山高し」とばかりに成長率が高く見えることを期待しているのでしょう。しかしそんな見せかけだけの改善で、来年10月に消費税を10%に再増税すれば、家計と日本経済には取り返しのつかない打撃となるでしょう。増税中止の決断は待ったなしです。そして、賃金と雇用を緊急に立て直すことが求められています。
英経済紙フィナンシャル・タイムス社説(14日付)も「多くの従業員の賃金の上昇はインフレ率に追いついておらず、それがひいては需要を減退させている」と指摘し、「資金力のある日本企業により大きな財政負担を負わせ、家計の負担を軽くした方が賢明」と主張しています。
270兆円を超える内部留保を今こそ活用し、大幅な賃上げを実現することが必要です。そして、労働者派遣法の改悪や「残業代ゼロ法案」などを断念し、人間らしい雇用を実現する方向へ、労働法制の抜本的な見直しを進めるべきです。
◇
【プロフィル】小池晃
こいけ・あきら 1960年生まれ、東京都出身。東北大学医学部医学科卒。東京勤労者医療会代々木病院などを経て現在、参議院議員、日本共産党副委員長・政策委員長。著書に「どうする 日本の年金」(新日本出版社)など。