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ついに日本叩き…岸田首相はイギリスの身勝手な主張に耳を貸す必要はない (1/2ページ)

 COP26で日本に「石炭火力の早期全廃」を求める英国

 スコットランドの首都グラスゴーで、10月31日から11月12日まで第26回気候変動枠組条約締約国会議、通称COP26が開催される。ホスト国である英国のジョンソン首相は、COP26を目前に野心的なグリーン投資プロジェクト構想を公表、自らが袂を分けた欧州連合(EU)をにらみ脱炭素化の議論をリードしようと躍起になっている。

 日本からも岸田新総理が出席する。総選挙を10月31日に控える中で異例の対応と言えるが、それだけCOP26が国際政治の重要な場と化していることの証左でもある。その日本に対して、英国のジョンソン首相はある「踏み絵」を用意している。つまり、日本が石炭火力発電の早期全廃を国際公約とするように迫っているわけだ。

 ジョンソン首相は今年8月、日本を含めた先進国に対しては2030年までに、また途上国に対しては2040年までに石炭火力発電を全廃するように声明を出した。他方で、10月22日に閣議決定された日本の「第6次エネルギー基本計画」では、2030年度の発電の約19%を石炭火力発電で賄うとされており、引き続き重要な位置を占める。

 19年度の実績では電源構成の32%が石炭火力であった。それに、15年度に策定された旧計画では2030年度の目標値は26%とされていた。政治的な理由から原子力発電所の稼働が困難な日本において、相応に目標は上方に修正されたと評価されてもいいはずだが、ジョンソン首相はこれではまるで不十分だという態度を隠そうとしない。

 人気低迷の打破をもくろむジョンソン首相

 日本に高圧的な態度をとるジョンソン首相だが、それが英国の有権者に対するアピールであることは明白な事実だ。世論調査会社YouGovによると、最新10月25日付の調査でジョンソン政権の支持率は25%まで低下、一方で不支持率は54%まで上昇しており、共に新型コロナ対応の遅れで支持離れが進んだ2020年夏以来の水準である。

 YouGovの10月25日時点の調査(複数回答)では、有権者の54%が健康(新型コロナ)を最大の関心事に掲げた。死者の増加は限られているが、英国では再び感染が拡大しており、有権者は再び関心を強めている。続く二位は、8月23日時点で35%まで低下していた経済であり、10月25日時点で44%に盛り返した。

 この間、英国はモノ不足の様相を強めた。行動制限の緩和に伴って需要が急速に回復した反面で、トラック運転手の不足から物流が停滞し、商店で品不足が深刻化した。一時はガソリン不足も深刻化、スタンドに長蛇の列が連日のように作られていた。極端な物流の混乱は解消したようだが、物流の問題は依然として英経済のボトルネックだ。

 この問題が欧州連合(EU)からの離脱によって引き起こされたことは明らかだ。北アイルランドとアイルランド間の物流問題も解決の糸口が見えず、EUの出方ひとつで英国はさらなるモノ不足に陥る可能性がある。皮肉なことに英景気の急回復は、ジョンソン政権の対応の不備と相まって、EU離脱の負の側面を一気に露呈させたのである。

 一方で、英国でも野党支持者を中心に環境意識が高まっており、先のYouGov調査では有権者の36%が最大の関心事であると回答、経済に次ぐ3番目の位置につけている。経済の問題が簡単に解決しない中で、有権者へのアピールを重視するジョンソン首相のCOP26に対する意気込みは強くなり、その一手段として日本を叩いているわけだ。

 EUを出し抜き米国にどうすり寄るか

 法改正などがない限り、英国の次期総選挙は2024年5月2日に行われる予定である。2019年7月に就任したジョンソン首相でなければ、2020年1月のEU離脱はなし得なかっただろう。一方で、それ以外の政治的な功績に乏しく、首相の人気は高くない。コロナ禍を脱したとしても経済が低迷したままなら、次期の総選挙での敗北は免れない。

 気候変動対策で世界をリードすることは、EUを出し抜き、さらに米国にすり寄る観点からも重要な意味を持つ。EUと距離を持ち米国と共闘することは、ジョンソン首相の岩盤支持者層である保守党の強硬派やその支持者にとって悪い話ではない。ジョンソン首相が唱える外交戦略構想である「グローバルブリテン」にもかなう話だ。

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