31日投開票の衆院選で、沖縄の各小選挙区が新型コロナウイルス禍の影響により、かつてない激戦模様となっている。県政与党である「オール沖縄」陣営の影響力が低下し、劣勢とみられていた自民党候補が追い上げているのだ。全国最悪の感染状況を招いた責任は県政にあるのか、国政にあるのか-。悪化した県内経済の打開策をめぐり両陣営の舌戦がヒートアップしている。
2度の選挙で1勝7敗
沖縄1~4区の選挙戦は平成29年の前回、26年の前々回衆院選と同様、オール沖縄系の共産、社民、立憲民主などの統一候補と、公明推薦の自民候補が激しく争う展開となっている。
だが、「これまでとは明らかに様相が異なる」と自民党県連幹部が話す。
「新型コロナに打ち勝つため、県民は国との対立ではなく、協力を求めている。国政批判ばかりしているオール沖縄に、かつての勢いはない」
オール沖縄は、米軍普天間飛行場(宜(ぎ)野(の)湾(わん)市)の名護市辺野古への移設に反対する革新勢力と保守派の一部が連携して結成された。その中心人物だった翁(お)長(なが)雄(たけ)志(し)氏(故人)が知事になった26年以降、1~4区の自民候補は前々回は全敗、前回も1勝3敗と、オール沖縄系の候補に大きく水をあけられていた。
いずれも最大の争点は辺野古移設問題であり、「県内マスコミ世論をはじめ反対の声が強かった」(同幹部)からだ。
しかし今回の争点は新型コロナ対策である。
県内では昨夏以降、人口10万人当たりの新規感染者数が全国平均より突出して多い日が続き、医療提供体制が一時崩壊寸前となる最悪の状況に陥っていた。しかもワクチン接種率が全国最低であるなど対策は遅れ、陣頭指揮をとる玉城デニー知事と、知事を支えるオール沖縄への風当たりが強まっていた。
観光産業が主力の県内経済にとって、新型コロナ禍の悪影響は深刻だ。対策強化を求める声は強く、昨年6月の県議選では国との連携を訴えた自民が事前の劣勢予想を覆して躍進し、オール沖縄系は議席を減らした。
離脱、乗り換えに衝撃
一方、感染拡大の原因は国政にあるとする批判も根強い。
「政府の無為無策こそ厳しく問われるべきだ。政権交代を実現しなければ、貧富の格差がますます拡大する」
衆院選が公示された19日、オール沖縄系の各候補はそれぞれの選挙区で街頭に立ち、異口同音に政府批判を繰り広げた。
辺野古移設問題も「重要な争点」にしたい考えで、候補の一人は「県民の力を結集し、辺野古新基地建設をストップさせよう」と訴える。
とはいえ、影響力の低下は否めない。衆院選を前にオール沖縄から保守派や経済人らの離脱が相次いだからだ。
9月2日には県議会の赤嶺昇議長が知事を支持する与党会派から離脱して中立となり、県議会の構成(48議席)が与党24、野党・中立24と同数になった。
同月中旬には建設業や小売業などを展開する大手企業「金秀グループ」の呉屋守将会長が衆院選での自民党支持を表明。呉屋会長はオール沖縄を結成当初から支援してきた保革連携の象徴的経済人で、“乗り換え”に衝撃が走った。
自民党関係者が突き放す。
「有力な保守派や経済人が離れ、もはやオールとは呼べない。革新共闘だ」
保守も分裂か
一方、保守派も一枚岩とはいえないようだ。
1区では前回、前々回とも自民の国場幸之助氏と自民を離党し維新などに所属していた下地幹郎氏が保守票を奪い合い、漁夫の利を得る形で共産の赤嶺政賢氏が勝利していた。
しかし昨年1月に維新から除名された下地氏が「保守合同」を掲げて自民への復党を画策。これに経済界の一部が同調し、一本化の動きをめぐって選挙戦直前まで情勢は混(こん)沌(とん)とした。
結局、自民党県連は下地氏の復党を認めず、これまでと同様、三つどもえの戦いとなった。下地陣営の関係者は「一本化なら間違いなく保守派が勝利したのに極めて残念」。国場陣営側では「復党は道理に反する。正々堂々と戦い、共産候補に勝利したい」と話す。
このほか2区では維新とNHK党の新人も出馬し、それぞれ支持を訴える。
今回の衆院選は、沖縄では来秋の知事選の前哨戦とも位置づけられている。基地問題などで国と連携していくのか、対決姿勢を続けるのか、選挙結果は、県政はもちろん国政にも大きな影響を及ぼしそうだ。
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衆院選沖縄・各選挙区の候補者
(1区)
赤嶺政賢 共産・前
国場幸之助 自民・前
下地幹郎 無所属・前
(2区)
宮崎政久 自民・前
中村幸也 N党・新
新垣邦男 社民・新
山川泰博 維新・新
(3区)
屋良朝博 立民・前
島尻安伊子 自民・新
(4区)
西銘恒三郎 自民・前
金城徹 立民・新