海外情勢

北朝鮮、新兵器実験「常態化」狙う 射程より技術深化に比重

 【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮は、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記が施政演説で国防力増強を主張した前日と翌日に新型ミサイルの発射実験を行い、兵器開発の加速を目に見える形で示した。米韓には対話の前提としてミサイル実験を容認せよと要求。米韓が実験阻止に向けた行動に出ない中、新兵器実験を常態化させ、在日・在韓米軍などへの攻撃手段の多様化と技術の深化を図る狙いとみられる。

 「われわれ式社会主義の存立と発展は国家防衛力の絶え間ない強化を抜きにして絶対に考えられない」

 正恩氏は9月29日に最高人民会議で行った施政演説でこう強調した。28日には、米中露が開発を競う「極超音速ミサイル」の初の発射実験を強行。30日に今回の新型対空ミサイルと間髪を入れずに発射実験を続けることで、1月の党大会で示した兵器開発の5カ年計画が着々と進む状況をアピールしてみせた。

 党大会で正恩氏は「対空ミサイルシステムも世界的水準で開発する成果を収めた」と言及していた。この際、2017年11月の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射についても「国家核戦力完成の歴史的大業」だったと改めて誇示した。

 17年のICBM発射までが米本土に届かせる射程への挑戦だったとすれば、極超音速ミサイルや対空ミサイル実験は、在日・在韓米軍などを標的にした兵器の多様化や誘導の精度など技術の深化に重点が置かれていることがみてとれる。

 ミサイル発射と並行して北朝鮮は米韓に対して正恩氏の妹、金与正(キム・ヨジョン)党副部長の談話などを通じ、米韓は軍備を増強しながら北朝鮮の兵器実験を非難する二重基準を撤回せよと要求してきた。対話したいなら、ミサイル発射を北朝鮮の「自衛権」として認めよとの意味だ。

 米国のソン・キム北朝鮮担当特別代表は9月30日、インドネシアで韓国高官と会談後の記者会見で、ミサイル発射に「深い憂慮」を表明しつつ、「米国は北朝鮮に敵対的な意図を持っていない」と述べ、対話の呼びかけを続ける立場を示した。

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は1日、軍の記念日の式典で演説し、国防力の増強について強調しながら、北朝鮮のミサイルに関しては一切、触れなかった。北朝鮮がこうした米韓の姿勢から、射程を短距離に限った最近のミサイル実験は事実上容認されたと受け止め、実験する兵器のレベルを一層引き上げていく可能性がある。

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