菅首相記者会見詳報

(1)コロナとの闘い「国民の協力に感謝」

 菅義偉(すが・よしひで)首相は9日の記者会見で、緊急事態宣言発令中の21都道府県のうち東京、大阪など19都道府県の期限を12日から30日に延長することなどを発表した。また、自身の退陣の意向についても改めて表明した。会見の詳報は以下の通り。

 「本日、新型コロナウイルス対策本部を開催し、19の都道府県の緊急事態宣言の延長を決定をいたしました。期間は今月30日までとし、宮城県、岡山県の宣言は解除します。蔓延(まんえん)防止等重点措置については、宮城県、岡山県を加え、8つの県を対象とし、期間は今月30日までとします。富山県、山梨県、愛媛県、高知県、佐賀県、長崎県については、9月12日をもって解除します。

 併せて、飲食店の時間短縮、テレワークなどの感染対策を継続することといたしました。全国各地で感染者はようやく減少傾向をたどっておりますが、重症者数は依然として高い水準が続いております。昨日の専門家による提言では、宣言の解除に関する考え方が示されました。病床使用率が50%を下回っていること、重症者、新規感染者、自宅療養者の数が減少傾向にあること、ワクチン接種の効果などを総合的に検討することとされ、これを踏まえ判断をいたしました。

 私自身が首相に就任して1年がたちますが、この間、まさに新型コロナとの闘いに明け暮れた日々でした。国民の命と暮らしを守る、この一心で走り続けてきました。今日まで大変なご尽力をいただいております医療、介護をはじめとする関係者の皆さん、国民の皆さん、お一人お一人のご協力に心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

 新型コロナという見えない敵との闘いは、暗いトンネルの中を一歩一歩、手探りで進んでいくことにも似た極めて困難なものでありました。救急車の音を聞けば、必要な医療は届いているのか、飲食店や観光業の皆さんの生業や暮らしは大丈夫か、そうした不安を何度も感じてきました。そのたびに、現場の声を聞き、専門家のご意見を伺い、国民にとって最善の道はどれなのか、担当閣僚とも議論を尽くし、決断をしてきました。

 ウイルスは変異を繰り返し、世界でいまだに猛威を奮っています。パネルが示す通り、日本においても、何度となく感染の波をもたらしてきました。この1年の間、皆さんとともに戦い続けてきた結果、多くのことを学びました。その一つは、ウイルスの存在を前提に繰り返される新たな感染拡大への備えを固め、同時にいわゆるウィズコロナの社会経済活動を進めていく必要があるということです。

 もう一つはワクチンは効くということです。世界の激しい獲得競争の中で、4月の訪米で、全ての国民の量を何とか確保し、5月の連休明けには本格的な接種を始めました。6月は1日平均110万回、そして7月は150万回、8月は120万回、予想を上回るペースで進み1億4000万回を超えました。

 パネルにありますように欧米諸国と比べても速いペースで接種が進んでいます。今月末には全国民の7割の方が少なくとも1回の接種を、6割の方が2回を終え、各国と同じ水準になると見込まれています。

 デルタ株による感染拡大の中でも、2回接種を済ませた方の感染は接種してない方の13分の1でした。最も重症化リスクの高い高齢者の約9割が2回接種を終えたこともあり、その重症者数、死亡者数は極めて少なくなってきてます。

 パネルが示す通り、今回の感染拡大を前回と比較すると、大きな変化が見られます。感染者は2.9倍に増えたのに対し、重症者は1.6倍にとどまり、死亡者は6割減少しています。ワクチン接種が進むことで、状況は全く異なったものとなり、戦略的な戦いができるようになっているのです。今回の感染拡大では感染者を10万人、死亡者を8000人減らすことができたとの試算も厚生労働省より示されています。

 1日100万回の目標を非現実的と疑問視する人もいましたが、ワクチン接種加速化の取り組みは間違いではなかった。そのように信じております。

 新型コロナ対策が最優先、この秋の政治日程について問われるたびに私はそのように申し上げてきました。そして、その通りに全力を尽し、足元の感染はようやく減少傾向にありますが、収束にはいまだいたっておりません。こうした中で、自民党総裁選挙が始まろうとしております。今も入院中の方や、自宅で不安な気持ちで過ごされている方が大勢いらっしゃいます。新型コロナ対策と多くの公務を抱えながら、総裁選を戦うことは、とてつもないエネルギーが必要です。12日の制限の解除は難しい。そうした中で覚悟するにつれて、やはり新型コロナ対策に専念すべきと思い、総裁選挙には出馬しないと判断をいたしました」

=(2)に続く

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