海外情勢

文氏「対話の扉開いている」と日本に呼び掛け、解放記念日演説で 依然具体策示さず

 【ソウル=桜井紀雄】韓国で日本統治からの解放を記念する「光復節」の15日、政府式典が旧ソウル駅庁舎で開かれた。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は任期最後となる光復節での演説で、日本に対して「対話の扉を常に開いている」と強調し、両国間の懸案や新型コロナウイルス禍などへの共同対応に向けた協力を呼び掛けた。

 いわゆる徴用工や慰安婦訴訟を念頭に、歴史問題については「国際社会の普遍的な価値と基準に沿った行動と実践で解決していく」と述べた。文氏は慰安婦問題の記念日である14日に「『被害者中心の問題解決』という国際社会の原則と規範をしっかりと守る」と説明しており、元徴用工や元慰安婦側の納得を前提にしているもようだ。

 文氏は、日韓が知恵を集め、困難を共に克服しつつ、「隣国としてふさわしい協力の模範を示せることを期待する」とも表明した。ただ、徴用工訴訟などの具体的な解決策は提示しておらず、日韓双方で文氏の任期内の解決は難しいとの見方も広がっている。

 文氏は、日韓が1965年の国交正常化以降、「長年、民主主義と市場経済という共通の価値に基づき、分業と協力による経済成長を共に成し遂げてきた」と指摘。「それが今後も両国が共に進むべき道だ」と述べ、任期内の日韓関係の改善への意欲をにじませた。

 だが、文氏は東京五輪に合わせた訪日と菅義偉(すが・よしひで)首相との対面での初の会談を目指しながら、直前に取りやめており、本格的な対話の糸口もつかめていない。

 北朝鮮に対しては「南北が共存しながら、朝鮮半島の非核化と恒久的な平和を通じて北東アジア全体の繁栄に寄与する『朝鮮半島モデル』をつくり上げられるはずだ」と述べ、新型コロナ禍対応などでの協力を改めて呼び掛けた。

 南北首脳は7月に南北間の通信回線を復旧させるなど、関係改善を進める方針で合意したものの、北朝鮮は、米韓両軍が今月16日から本演習に入る合同軍事演習に強く反発して対抗措置を示唆し、再び緊張関係に逆戻りしている。

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