東京五輪で日本選手が過去最多の金メダルを獲得するなど活躍を続ける中、政府与党は積極的に祝意を発信している。新型コロナウイルス禍で開かれた五輪の成功を、次期衆院選の追い風としたいところだ。ただ、ワクチンの供給不足などで菅義偉(すが・よしひで)内閣の支持率は低迷しており、回復の材料になるとも言い切れない。
「日本社会全体がちょっと鬱的な感じの中、五輪の選手、特に日本の選手が与えてくれるインパクトは大きなものがある」
自民党の下村博文政調会長は2日、党本部で記者団に、日本選手のメダルラッシュについてこう語った。
五輪の開会式が行われた7月23日以降、首相官邸はツイッターなどのSNSで金メダリストを祝うメッセージを発信。30日のフェンシング男子エペ団体で日本チームが日本フェンシング界初の金メダルを獲得した際には「本当におめでとうございます」と投稿した。
政府与党内には沈滞した雰囲気を五輪成功で上向かせたい思いがあるが、閣僚経験者は「五輪成功と支持率は結びつかない」と弱音を吐く。新型コロナの1日当たりの新規感染者数が増えれば増えるほど内閣支持率は下がる傾向にあり、感染力が強いインド由来の変異株(デルタ株)が猛威を振るう「第5波」となっていることが大きな要因だ。
産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の7月の合同世論調査では、菅内閣の支持率は39.0%となるなど報道各社の世論調査で支持率が下落傾向にある。衆院選の趨勢(すうせい)について自民関係者は「五輪後の支持率と、ワクチン接種がどれだけ広がるかが焦点だ」と強調した。
延期や中止を求めてきた主要野党は対応が割れた。
今夏の開催に反対していた立憲民主党は批判を控えている。枝野幸男代表は7月29日の記者会見で「中止すれば、かえって大きな混乱を招くと強く危惧している」と述べた。
蓮舫代表代行がツイッターで日本選手の活躍を称賛した際には「ダブルスタンダード(二重基準)」と指摘も受けたが、立民中堅議員は「五輪の是非はいわない。一歩間違えば、アスリートの戦いに水を差すことになりかねない」と話す。
一方、開催に反対してきた共産党の小池晃書記局長は2日の会見で「感染拡大がとどまるところを知らない。引き続き五輪の中止を求めていきたい」と主張した。(今仲信博)