【台北=矢板明夫】これまで新型コロナウイルスの封じ込めに成功していた台湾で感染者が急増し、緊張が高まっている。対策を統括する中央感染症指揮センターは一部の感染者の活動範囲を公開するなど、市民に注意と警戒を呼びかけ、防疫警戒レベルの引き上げの検討も始めた。
台湾当局は13日、新型コロナの市中感染者13人が確認されたと発表した。11日には7人、12日には16人が確認されており、連日2桁の市中感染者が確認されるのは台湾で異例だ。台湾ではこれまで1200人余りの感染者が確認されたが、約9割が空港などで入境の際に判明していた。
感染拡大のきっかけは大手航空会社のパイロットの海外での感染だった。台湾では海外から戻った場合の隔離期間は14日間だが、海外を頻繁に行き来するパイロットは特別に3日間に短縮されている。感染したパイロットは隔離終了後に感染が判明。この間に接触した同僚やホテル関係者、訪れた店の店員らが次々と感染し、感染ルートが不明の事例も確認された。
台湾当局は11日に防疫警戒レベルを、大規模集会を中止などするレベル2に引き上げたが、室内での5人以上の集まりを禁止し、娯楽施設の営業を停止などするレベル3への引き上げも検討しているという。
感染拡大を受け、台湾の株式市場ではここ数日、株価が下落。航空やハイテク関連株が売られた。投資家の間ではパイロットへの規制が強化され、半導体などの輸出に影響が出ることを懸念する声も出ている。