菅義偉政権が厳しい目を向け始めた中国の非営利教育機構「孔子学院」をめぐっては、すでに海外では中国の「プロパガンダ(政治宣伝)」機関などとして警戒が高まっている。
米国では孔子学院について、トランプ前政権下で一気に締め付けを強めた。
ポンペオ前国務長官は昨年8月、孔子学院が「中国共産党による世界規模のプロパガンダ工作に使われている」と断定し、米国内の学院を統括するワシントンの「孔子学院米国センター」を大使館や領事館と同様の外国公館に指定すると発表した。
同センターに米国内の人事や保有資産を米政府に報告することを義務付け、米当局が孔子学院の政治宣伝活動の実態把握を容易にすることを狙ったものだ。
前政権は昨年末、米国の小中校や大学などの教育機関が孔子学院と契約や提携した場合は報告を義務付ける行政命令も発表した。
この行政命令は、今年1月にバイデン新政権が発足した時点で行政管理予算局(OMB)による審査が終了しておらず施行されずに差し戻されたため、現政権下で改めて行政命令として再提出するかどうか検討を進めている。
バイデン政権も孔子学院に厳しい対応を取る姿勢は前政権と共通しており、中央情報局(CIA)のバーンズ長官は2月の指名承認公聴会で孔子学院について「真のリスクだ」と指摘し、米教育機関に「厳重な警戒」を要請。自身が大学の学長ならば孔子学院を閉鎖すると言明している。
オーストラリアでは連邦政府が昨年12月、地方政府や大学などが外国と結んだ協定について、連邦政府が「国益に反する」と判断すれば破棄できる法律を制定。豪州紙によると、連邦政府は国内13大学にある孔子学院について運営実態を調べている。
複数大学の孔子学院では教育内容の決定権が中国の本部にあったことが報じられており、連邦政府は神経をとがらせている。同国外務省は運営継続は「ケース・バイ・ケースで判断される」とし、閉鎖の可能性を否定していない。
既に南部ニューサウスウェールズ州は2019年、中国のプロパガンダ機関との批判の高まりを受け、州立小中高校にあった孔子学院の教室を閉鎖した。(ワシントン 黒瀬悦成、シンガポール 森浩)