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近鉄、JR西が貨物輸送のなぜ 物流企業とタッグで長距離路線の強み活かす  

 近畿日本鉄道とJR西日本が今夏以降、物流事業者と組み、貨物と旅客を同時に輸送する新サービスを相次ぎ始める。新型コロナウイルスの影響で旅客が減少する両社だが、長距離路線を保有する強みを生かし、新たな収益源を開拓したい考えだ。物流事業者が悩むトラックドライバー不足の解消にもつなげる狙いもある。(黒川信雄)

 コロナ禍で新事業

 近鉄は名古屋と大阪を結ぶ特急「アーバンライナー」の車内販売用スペースを使い、工業製品の部品などを輸送するサービスを今夏に開始する。アーバンライナーは大阪難波-近鉄名古屋間を約2時間20分で結ぶため、午前中に集配すれば当日中に荷物を配送できる。駅から顧客企業までの配送は、近鉄グループの福山通運が手掛ける。

 アーバンライナーは従来、難波と名古屋の間を途中停車せずに結んでいたが、昨年3月に同路線で新型特急「ひのとり」の運行が始まったことを受け途中駅でも停車するようになり、車内販売サービスも停止していた経緯がある。

 貨物輸送はかねてから検討されていたが、「コロナ禍で新事業を模索するなか、実現が加速した」(近鉄)。製造業が集中する大阪と名古屋の間では、部品発送の需要などが高いという。

 JR西はコロナ禍で利用が減少する山陽・九州新幹線の車内販売スペースを使い、九州から鮮魚や青果を関西まで運ぶ実証実験を2月に開始した。保冷などの状況を見定めつつ、「今秋には事業化したい」(担当者)考えだ。2月の実証実験では、新幹線で新大阪まで輸送した商品を特急で大阪駅まで運び、同駅に直結するホテルで食材を調理してみせた。

 ドライバーの悩み解消

 近鉄の親会社である近鉄グループホールディングス(HD)とJR西は今期の連結業績見通しで、それぞれ780億円、2400億円の上る巨額の最終赤字を見込む。赤字幅が拡大した理由のひとつには、両社は広範な路線を持つ半面、コロナ禍によるレジャーや出張需要の消滅で厳しい打撃を受けた事情がある。

 今回の取り組みは、長距離路線を持つ特性を生かし、ドライバーの不足や長時間労働を解消したい物流事業者のニーズを捉える狙いがある。荷物の集荷などの業務は物流事業者側が手掛けるため、大がかりな追加投資などがいらないことも鉄道企業側にはメリットだ。

 ただ、両社とも新事業がどこまで収益につながるかは未知数としている。乗客も乗車する列車の場合、ホームに乗客がいるうえ駅の停車時間が極めて短く、荷物の搬入・搬出などに慎重な調整が必要といった面もある。ただ、「物流事業者側の関心は極めて高い」(JR西)といい、新たな収益源として事業を軌道に乗せたい考えだ。

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