大阪府が3月31日、新型コロナウイルス特別措置法に基づく蔓延(まんえん)防止等重点措置の要請に踏み切った。府の対策本部会議を当初の予定から急遽(きゅうきょ)前倒しして下した今回の決断。背景にあるのは「過去最大ペース」(府幹部)の感染急拡大だ。
大臣への電話
「感染の山をできるだけ抑えていくため、大阪市内中心に集中的な対策を取る必要がある」。吉村洋文知事は31日の会議後、記者団にこう述べた。会議では第3波を上回る速度で感染が急拡大していることが報告され、「20~30代の感染者が急増していて60代以上への感染拡大が避けられない」などとの指摘が上がり、要請が決まった。
実は府は前日の30日夕時点で、4月1日午後に対策本部会議を開き、重点措置の要請を決定する方針だった。しかし30日に東京を上回る432人の感染が確認され、31日には500人に達する見通しとの報告を受けた吉村氏は、幹部に「前倒しできないか」と調整を指示。31日の開催が決まった。
これまで慎重姿勢だった国の対応の変化も影響した。ある府幹部は「30日夜になって重点措置の適用を前向きに検討してもらえる感触を得た」と明かす。
ここ数日の感染急拡大に伴い、府の対応は急展開していた。26日に飲食店への営業時間短縮要請の期限延長などを決めると、わずか2日後の28日夜、吉村氏は西村康稔(やすとし)経済再生担当相に電話をかけ、「重点措置の適用を申請したい」と伝えた。
病床逼迫懸念
府内の直近7日間の新規感染者数は、16日に648人だったのが、30日には2182人となり、この2週間で約3・4倍に急増。政府の対策分科会が示す6指標の一つである「7日間の人口10万人あたりの新規感染者数」も3月1日は5・67人だったが、24日に12・21人、31日には28・58人と加速度的に増え、最も深刻なステージ4(爆発的感染拡大)の目安「25人以上」に達した。
感染者の急増により、今後は病床の逼迫(ひっぱく)が懸念される。31日時点の府内の重症者は92人。府は直近7日間の平均の新規感染者が31日以降、前週比約2倍で推移した場合、4月9日に重症者が126人に上り、確保病床の使用率は6割に近づくと予測。4月中旬以降は自粛要請の基準「大阪モデル」で非常事態(赤信号)を示す70%を超える恐れがある。
府は31日、急拡大に備え病院側に計画上最大の病床を確保するよう求める通知を出した。藤井睦子健康医療部長は31日の会議で「年末年始と比べても最大ペースでの感染拡大で、経験したことがない」と危機感をあらわにし「(拡大抑止のために)急ブレーキを踏む必要がある」と強調した。
府が要請に踏み切ったことについて、飲食店で働いているという大阪市生野区の女性(47)は「マスク会食の案内など店側は手間が増えそうなので少し面倒だ」と懸念。一方、「これだけ感染者が増加すると、何らかの対策はしなければいけないので仕方ない」と受け止めた。
4月1日から大阪市内で勤務する新社会人の滋賀県彦根市の男性(22)は「時期が時期のため仕方がないが、同期などと気軽にごはんに行けないのは悲しい」と嘆く。マスク会食の義務化は「酒を飲んだら、みんなが守るとは思えない。罰則がなければしないだろう」と話した。