令和元年10月の消費税率引き上げに伴い導入された税抜きの「本体価格」のみの表示を認める特例が今年3月末で終了し、値札やチラシに消費税込みの価格を示す「総額表示」が1日に義務化される。支払い金額が分かりやすくする一方、店側には税込み価格を表示することで購買意欲が低下することへの懸念もある。
義務化を間近に控えた30日、東京都墨田区にあるスーパーイズミでは、従業員が開店前から品出しと並行して、値札の差し替え作業に追われていた。
同店は品ぞろえと価格の安さを売りにしているが、これまで値札やチラシは税抜き価格の表示だったため、税込み価格を併記することに。代表の五味衛さん(61)は「100円(などのキリのいい単位)を超えてしまった場合、(客が)高いと感じてしまう可能性もある」と心配する。
1週間前から切り替え作業を進めているといい「普段の仕事も忙しいのに、従業員に負担をかけて申し訳ない」と語った。
ディスカウントストア大手ドン・キホーテも、国内583の全店舗で変更作業を進める。運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスによると、商品が膨大なため3月中旬ごろから順次変更作業を進めている。
同社広報は「通常業務に加えて変更作業を行うのは大変だがお客さまに誤解を与えないような表記を心掛け、今後もお得な価格での提供を行っていく」としている。
総額表示の義務化について、調布市に住むアルバイトの女性(27)は「パッと見てすぐ分かるし、まとめて買うときも計算しやすい」と歓迎。ただ、コロナ禍で客足が鈍る店なども出ている中で対応が迫られていることについては「コロナで大変なときなので、タイミングが悪いと思う」と語った。
東大和市の男性会社員(45)も「分かりやすく、買い物がしやすくなる」と語る一方、買い控えの可能性について「10円でも20円でも安いものを選ぶので、手を出さずに、あきらめることもあるかもしれない」と話した。