「ありえない」状況になぜ平然としているのか
「財政赤字が進んでいるのに、コロナ対策で湯水のようにお金を使って、大丈夫なんですか」
先日、ある大学生からそう問われた。
「大丈夫じゃないけど、人の命には代えられないからねえ」と言わざるを得なかった。
学生が一番気にしているのは、コロナ対策で次々と組まれる補正予算の財源はどうなっているのか、若い世代はさらに国の借金を背負わされるのではないのか、ということだ。
財源は、赤字国債を発行して賄うのだろう。そして、その学生の懸念の通り、財政赤字をさらに積み上げることになる。
国の財政赤字は、とっくに1000兆円を超えている。なのに、令和3(2021)年度の国の一般会計総額は106兆6097億円と9年連続で、過去最大を計上した。
一方の歳入額の予算は、57兆4480億円と予想されていて、前年比で6兆700億円ほど減る予想だ。不足分は、赤字国債の発行によって埋めることになる。
また今年度は、コロナ対策費として、一般会計のほぼ1年分に匹敵するほどの補正予算を組んだ。
一般人の発想からすると、年収が500万円しかないのに、1000万円の出費計画を立てて平然としているのが、日本国なのだ。その上、今年は年収減が予想され、すでに昨年はコロナ対策で、1000万円以上も使ってしまった――。
なぜ、こんな「ありえない」状況なのに、日本国君(くん)は平然としているのか。
日本には、赤字でも国債を発行すれば、それをすべて回収する、二段構えの仕組みがあるからだ。
一つは、日本の金融機関がずっと、愚直に国債を買い続けた。本来国債は、世界中の金融機関が購入できる。実際、ギリシャでは外国の機関投資家が、国債の大半を購入して国家財政が危うくなり、それを知った多くの保有者が国債を手放したために、国が破綻した。
日本が安全なのは、全体の97%が日本国の金融機関によって保有されているためだ。
さらに、安倍政権以降は、日本銀行も国債を買っている。
日本政府が借金のために発行した債券(国債)を、日本の中央銀行が買っているのだ。
この一見、矛盾する行為がなされているのは、総理と日銀総裁が「異次元の金融緩和」と名付けて「それでよし!」と決めたからだ。
しかし、既に日本の金融機関の中から、「これ以上は購入できない」と離脱するところも出ており、ますます日銀が活躍している(日銀は、それ以外にも、東証の株価を維持するために、上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT=リート)も購入している)。
なぜ、こんな「蛮行」がまかり通るのかと言えば、日銀はその気になれば、いくらでもお札を刷れるからだ。